「EVERYWHERE」(IMPULSE UCCI−9190)
ROSWELL RUDD
コルトレーン、シェップ、アイラー、ファラオらが名を連ねていた当時のインパルスでも異彩を放つ作品。昔、どこかのジャズ喫茶で一度聴いたことがあるが、ほとんど印象に残らなかった。今回廉価盤を購入して再度聴き直してみたのは、ジュセッピ・ローガンのプレイをもういちど聴いてみたいという気持ちがあったからだが、正直言って、ジュセッピはほとんどフルートのみ(バスクラもちょっと)、それも効果音的な参加のみにとどまっている場合が多く、がっつりとソロをしている曲はないに等しい。やはり、主役は、コンポジションにソロにと大活躍のラズウェル・ラッドであり、もうひとりのフロントであるアルトのロビン・ケニヤッタであろう。ラズウェル・ラッドは、全体のサウンドもバシッと決めていて、サウンドクリエイターとしての才能も示し、また、ソロイストとしてもしっかりした基礎のうえにトロンボーンを吹いていることがわかる。実際、すごいメンバーで、チャーリー・ヘイデン、ビーバー・ハリスというリズム隊なのにいまいち話題にならんというのは不思議だ。もし、ジュセッピ・ローガンやケニヤッタのかわりに、だれか存在感のあるテナーが入っていたら、もしかしたら後世に残る作品になっていたかもしれない。しかし、今となってみれば、本作の話題性はやっぱりこの、ちょろちょろっとフルートを吹いている、なんだかよくわからないジュセッピ・ローガンの参加ゆえなのかもしれないなあ。ジャケット写真で見るかぎり、当時のラッドはプレスリーに似たハンサム青年で、こんなやつによくこのめちゃめちゃなメンバーが御せたものだと思う。