「GROANIN’THE BLUES」(P−VINE SPECIAL PLP9012)
OTIS RUSH
このアルバムをいつ、どういう経緯で手にしたのか、あまり覚えていない。真っ黒けのジャケットがかっこいいから買ったのか、タイトルがえぐいから買ったのか、コブラというレーベル名に魅かれたのか……たぶん大学4年ぐらいのときに買ったのだとおもうが、とにかくそのときから今までまったく飽きることなく聴き続けている。吾妻光良氏によるライナーがついていて、「恐ろしい程のメガトン級ブルース衝動」と書いてあるが、まさにそのとおりだとおもう。これとか、マジック・サムとかは何度きいても「ええなあ〜ええなあ〜」と極楽状態になってしまうのだが、このあとにつづくモダンブルースというものがどうもなじめない(なかには好きなやつもあるのだが……)。これはなぜなのだろうか。いつも考えてしまう疑問である。さて、本作はいろんな形で出されているみたいだが、このP−VINEのアルバムにおいては、もちろんA面B面どちらもいいのだが、とくにB面がめちゃめちゃ好きで、たぶん全曲好きだ。あんまり聴き過ぎて、歌詞からギターフレーズからいろいろ覚えてしまった。B−1「スリー・タイムズ・ア・フール」で、「トゥー・ビー・ナイス」という歌詞の歌い方とか、「マイ・ベイビー・イズ・ア・グッド・アン」のラストで「シズマベイビ」とくり返すところとか、好きな箇所をあげていくとたちまち何十頁にもなってしまうぐらいだが、やはりなんといってもとどめは「ダブル・トラブル」だろう。「ヘイ・ヘイ・イェー」というところの声の伸ばし方や「サム・オブ・ディス・ジェネレイション・イズ・ミリオネアーズ」というところの畳みかけかたや、歌詞の最後の「クロズ・トゥ・ウェア」というところの歌い方などしびれまくる。重くて暗い(なにしろ「二重苦」ですから)歌詞もいいのだが、とにかくそのヘヴィな歌い方がたまらんのです。たぶん一生聴き続けていくと思うな。
「RIGHT PLACE,WRONG TIME」(EDSEL RECORDS/DEMON RECORDS ED CD 220)
OTIS RUSH
オーティス・ラッシュってコブラのやつ以外ならどれがいいのかと思っているあなたには「これやこれや、これですがな」といってすすめるしかない定番アルバム。三管を加えたゴ―ジャスな編成でラッシュが鋭いギターを弾きまくる。ギターはとにかくめちゃくちゃすばらしい。しかし、やはりボーカルの切々とした感情が聴き手の心臓をわしづかみにする。コブラの全録音は今は簡単に入手できると思うし、それがマストだろう。とにかく聴いているとギターとボーカルからラッシュの「気持ち」が伝わってきて、こちらもぐだぐだになるのだ。かっこいい。めちゃくちゃかっこいい。しかし、決して感情過多ではない。あの「ダブルトラブル」ですら、悲しいまでにクールなのだ。そして、そのギターはボーカルよりも雄弁にラッシュの気持ちを伝える。本作は、アルバム単位としては、本当にラッシュの残した最高の作品だと思う。4曲目にコブラでおなじみの「スリー・タイムス・ア・フール」(キレッキレの演奏。コブラ録音にも負けないノリ)をやっていたり、5曲目に超有名スタンダード「レイニー・ナイト・イン・ジョージア」を素朴な感じで歌い上げたり、多くのリスナーに自分の音楽を届けようという姿勢もある。私にはブルースのことやギターのことはよくわからないのだが、ラッシュのギターソロを聴いていると、ギターの絃が切れる寸前みたいなキリキリのところで弾いている超繊細で超鋭く、超ヤバいソロ……みたいな気がする。それは本作のインストの7曲目を聞いても、晩年(というべきか)のライヴでのソロの数々をYOUTUBEとかで聞いてもそう思う。繊細だとは思うのだが、線は太いのだ。もしこのアルバムが録音してすぐに発売されていたらラッシュのその後も変わっていたかもしれない、とか思ったりするが、そういうことは考えないほうがいいのだろうな。でも、キャピタルはなぜこれをオクラにしたのか……まったくわからん。オーティス・ラッシュを聞くときはなぜか悲しみの感情が灯る。このひとは歌詞に「CRY」という言葉が多いような気がする。歌舞伎や人形浄瑠璃にも通じるような哀しみに彩られた壮絶なボーカルはこのひと独特のものなのだと思う。傑作!