yoshiki sakurai

「LIVE AT SOUL DAMA TOKYO 13.OCT 2021」(BLOWBASS)
桜井芳樹 高岡大祐

 高岡さんのレーベルから発売されたもので、例によって段ボールのジャケットで「NO EFFECTS NO OVERDUB」と記されている(ハンコで)のを見るとわくわくしますなー。収録曲の関係であまり詳しく書いてはいけないそうなので、全体の感想だけを書くと、「めちゃくちゃいい」。1曲目の冒頭、ギターのイントロから、なんというか「無造作」な感じでずずずーっと入ってくる高岡さんのチューバ。この感じが全編続く。無造作といっても、実際にはものすごく繊細な演奏なのだが。ギターとチューバという組み合わせだと、チューバはベースの役割ということになるのが普通だろうが、まったくそうではないのがこのひとの世界にただひとりという存在の意味である(えっ、チューバでこんなことができるなんて! というような表現はこのひとに対してはあまり誉め言葉にならないと思う)。ときにメロディであり、ときにリズムであり、ときにベースであり、ときにノイズマシーンであり……。このふたりの演奏の、ねっとりとした絡み合いは、酒百杯ぐらい飲めるような旨味成分に満ちていて、こんなCDを俺はたった○○円で購入していいのか、と思うぐらいの濃密な演奏だ。しかし、濃密なのだが、同時にスカスカであって、このあたりのことを真面目に書くには今酔っ払いすぎている。いつか素面のときにもっとちゃんとしたレヴューを書きたいが、そんなことをだれが望んでいるのか。とにかく選曲のすばらしさと演奏の凄さゆえに「このCDをみんなにガンガン広めたい!」と思うのだが、そうできないのでとにかくひたすら聴き込む日々であります。音楽というのは個性と個性のぶつかり合いであり、その結果めちゃくちゃなことになったり、こうして素晴らしいことになったりするのがリスナーとしては面白い、面白すぎることなのである。いやー、それにしても宝物のような演奏ばかりで、さっきも書いたが選曲のすばらしさに関しては完全に私の好みというしかない。あのひとの曲も2曲やってくれていて、うれしい。ありがとう。大事に聴きます。録音もすばらしく、チューバの息使い、ギターの繊細なピッキングなどがリアルに聴こえてくる。どの曲もメロディがあり、リズムがあり、コード進行があるのに、ものすごく自由に聴こえる。これがたったふたり(しかもひとりはチューバ)で生み出された音楽とは……皆さん、驚きませんか。しかも、アクロバチックな感じではなく、ひたすら美しいのである。6曲目でギターだけをバックにしたチューバソロの歌の凄さよ。そしてそれに続くギターのすばらしさ……。ラストの7曲目のギターソロの瑞々しさは、そのリズムの溜めというか間もあいまってひたすら感動した(チューバは少しだけ伴奏して最後の最後にソロ)。というかこれに感動しない人類っているのか? 傑作。