「KYOTO MON AMOUR」(ACT MUSIC 9835−2)
ERIC SCHAEFER
ドイツのドラマーのリーダー作で、クラリネット、琴、ベース、ドラムという変則的な編成。クラリネットが梅津さんなので、梅津さんのライヴの物販で購入。こんなアルバム出てるの知らんかったなー。リーダーによるライナーの冒頭には山頭火の俳句が掲げられ、これがこのアルバムを作った意味だ、というようなことが書かれている。3ヶ月ほど京都にアーティスト・イン・レジデンスとして滞在していて、そのあいだに寺院を訪れたり雅楽とか能とかを体感し、竜安寺の苔や枯山水を見たり、比叡山の紅葉を見ては作曲していたらしい。鞍馬の火祭りにも参加したと書かれている。ジャケットやなかの写真にも石庭や墨絵、書などが使われている。ヨアヒム・キューンとも共演しているひとだが、作曲者としてもすごくて、本作のほとんど全曲を作曲(もしくはアレンジしている)。筝を入れていることなども、正直、いわゆる「日本趣味」の作品なのだろうな、と軽ーく考えて聴き始めたがびっくりした。めちゃくちゃよかった。梅津さんがクラリネット系に絞っている点も「さすが」というべきであって、とにかくすばらしい演奏である。とにかく曲がどれも良くて、このアルバムはまずはコンポジションが根底にあり、それが「日本」をモチーフにして作られたものであって、だからそこがコケたら話にならないわけだが、ほんとええ曲ばっかりである(しかも、あまり日本っぽくない)。そして、だれがどこまでインプロヴァイズしているのか、どこまで譜面があるのかもよくわからないが、そういうことはあまり関係ない音楽でもある。曲の良さと梅津さんのクラの良さがあいまって、いつまても聴いていられる。フリーキーに暴れることの(ほとんど)ない梅津さんもとてもええ感じである。「東北」も演奏されていて、そのことにライナーで言及されている。最後にボーナストラックとしてラベルの「眠れる森の美女のパヴァーヌ」が入っているが、なんの違和感もなく溶け込んでいる。傑作。