「BLUE AND GREY SUITE」(ENJA RECORDS ENJ−9045 2)
MATTHIAS SCHUBERT QUARTET
最近、おもろいなあと思ってるひとりが、このひと、マティアス・シューベルト(シュバート?)。本作は20年もまえの録音だし、エンヤだし、ピアノトリオがバック……ということで、かなりど真ん中のジャズである。私のイメージだと、高音をピーピー言わせまくり、変態的なフレーズを吹きまくるひと、という感じなので、ここでのオーソドックスな演奏はちょっとびっくりした。オーソドックスといってもかなり変態的ではあるけど。とにかく、ええ曲を書くし、楽器もええ音で上から下まで無理なく鳴っていて、音程も正確無比で、サックス奏者としては根本的な実力のあるひとであることは、本作を聴けばよくわかる。やや細身の音だが、すごく美しい音色である。しかも、多様な音が出せることは最近の演奏で十分証明されているが、本作でもときに情感たっぷりの音やダーティーな音も交えて、真摯な表現に徹している。かっこええ。しゃくりあげるようなフラジオとか正確で細かいタンギングとか、じつはめっちゃむずかしいと思うけど、そういうのをさらりとフレーズに混ぜ込むあたりもすばらしい。フレーズもじつに個性的で、一度聴くと忘れられない。こういうフレーズは練習で出てくるものではないように思う。やはり、かなり変態なひとなのだろう。ドラムがトム・レイニーで、各所で大活躍している。ドライヴしまくるピアノもすばらしい(サイモン・ナバトフ)。4人での一体感、疾走感も十分味わえる。4曲入っているが、3曲目が表題曲で、30分を超える組曲である。かっちりしたコンポジションの場面、フリーなインタープレイの場面、ジャズ的なガンガンスウィングする場面、バラード的な美しい場面、ポップな場面……などが矢継ぎ早に展開していく、本当の「組曲」で、聴きごたえのある演奏。テナー一本で勝負しているのもええやん。4曲目が一番、(サックスが)フリーキーな演奏になっているかも。ライヴなのに、完成度抜群。4人の集中力は半端ではないですね。完全燃焼。いやー、傑作でした。