louis sclavis

「L’AFFRONTMENT DES PRETENDANTS」(ECM RECORDS UCCE−1010)
LOUIS SCLAVIS QUINTET

 ルイ・スクラヴィス・クインテットなのに、一曲目の冒頭はワンコードによるジャン・リュック・カポッゾのすばらしいトランペットソロで幕を開け、それが延々と続き、おい、スクラヴィスどないなったんや、と思っていると、そこから一転して2管でのテーマとなる。超複雑な、しかも超かっこいいテーマで、このあたりで完全にノックアウトされてしまうのだが、それに続くスクラヴィスのソロの凄まじさよ! いやー、わしゃ目が点になって耳も点になったよ! エレキギターがスクラヴィスの猛烈なソロをノイジーにかき回す……と思ったら、これはチェロなのだ。これは凄いわ。このテーマをこのスピードで吹くというだけでも恐れ入りましたという感じなのだが、ソロは凄いわ、バッキングも凄いわ、曲も凄いわ……もうこの1曲だけで傑作であることは確信できた。2曲目はスクラヴィスとチェロのデュオで味わい深い。3曲目は明るい曲調だが、どこかドルフィー的な跳躍と諧謔を感じる、つまりはスクラヴィスらしい曲。チェロが大暴れして爽快。一曲のなかにいろいろな見せ場があって濃密なのも、スクラヴィスらしい。4曲目はベースソロ。超バカテクだが、歌いまくる。しかも、その「歌」が妙なのだ。めちゃくちゃかっこいい。5曲目は超アップテンポでの即興ではじまり、グルーヴのあるテーマが登場。けっこうスカスカな曲で、これもややドルフィー的な感じ。ソロも間をいかしたスカスカなものだが、途中で倍テンになったり、ブレイクがあったりとめまぐるしいが、スクラヴィスは楽々とこなしていく。6曲目はチェロとベースによる重々しいルバートのデュオではじまり、インテンポになるとまるで「ムー帝国讃歌」みたいな曲調になって、トランペットがマンダを呼ぶ。このあたりはもう絶妙ですね。途中、ベースとドラムのデュオになり、そこから突然テーマが現れる。いやー、見事としか言いようがない。そしてスクラヴィスの緊張感満点のソロ→テーマ。7曲目はスクラヴィスとベースのデュオ。愛おしそうに一音一音を吹く。構成力もすばらしい。もとはスクラヴィスが音楽を担当した映画に使われた曲らしい。8曲目はソプラノサックスの無伴奏ソロによる演奏だが、やけにジャズを感じる。9曲目は(誤解を承知でいえば)レイシーっぽい曲調。テーマもソロも、音と音のインターバルの大きさが印象的だが、たぶん意識的なものだろう。最後の10曲目は、チェロ、ベース、バスクラの3人による即興。なんともたっぷり感のある濃密な空間。2分あまりの演奏だが締めくくりにふさわしい。いやー、どうにもこうにも傑作でした。スクラヴィスをはじめて聴くというひとにもおすすめできます。