「ERR GUITAR」(INTACT RECORDS INTACT CD 281)
ELLIOT SHARP WITH MARY HALVORSON AND MARC RIBOT
普段はこういうギターだけ3人集まりました、みたいな演奏を聴くことはまずない。ギター弾き同士がギター弾きにだけわかる言語で「お、そうきましたか。ならば私はこう……」「お、やりますなー。では、これはどうです」「お見事」みたいな演奏は超苦手で、だから「三大スーパーギタリストのナントカカントカ」みたいなギター弾きだけにしかわからんものには近寄らない。スーパー・ギター・トリオとか一番あかん。ところがそういう私が、いやー、これは聴くしかないのでは……と思ったのが本作で、3人のクレージーギター奏者を集めて面白くないわけがない。絶対聴くしかない。そう思って聴いてみたら……だははははは、やっぱりめちゃくちゃ面白かった! このアルバムを聴いて、おもろない、とか、わからん、とかいうひとは存在しないんじゃないかなあ。そうでもないのか。たとえば、インプロヴィゼイションとかノイズとかフリーミュージックとか現代音楽とか……そういうものに一切興味のないひとが聴いてもこの楽しさ、凄さはわかるのでは? いわゆるいかがわしさとか力づくとかごり押しとかブルース的なグルーヴとかファンキーさとかジャズ的上手さとかそういうものはほぼここにはない。弦をはじく音色の快感とそれが積み重なっていく過程とその結果生まれる夢マボロシのような楼閣があるだけだ。それは一瞬で霧散し、我々は呆然とするしかない。キーとなっているのはリーダーのエリオット・シャープでほぼ全曲入っている。ソロ、デュオ、トリオ……どれも凄いが、この3人の顔ぶれというのは本当に企画の勝利というか、このメンツを集めたというだけでエリオット・シャープはえらい。全曲楽しくて面白くてめちゃくちゃ何度も聴いた。でも、結局、ギターだけの演奏なので、これをどう表すかというコトバは出て来ないのでこんな文章になってしまうのだ。ロックやジャズやクラシックやフォークをやってるギター少年、青年、中年、老年にぜひ聴いてもらいたい楽しい楽しい楽しい楽しいギターアルバム。傑作。