「ASK THE AGES」(AXIOM 422−848 957−2)
SONNY SHARROCK
ソニー・シャーロックが「ラスト・イグジット」で復活後に作った91年のアルバムでメンバーが異常な組み合わせだ。テナーにファラオ・サンダース、ベースにチャーネット・モフェット、ドラムにエルヴィン・ジョーンズ(!)。そして、プロデュースがビル・ラズウェルで、なるほどなあ、ビル・ラズウェルが好き勝手にやったわけだな、とわかる。なにしろドラムがエルヴィンなので、ずっと4ビートでうねりまくるリズムが続いているわけで、ソニー・シャーロックのノイジーでロックっぽいノリのギターとは合わないような合うような。そしてチャールズじゃなくてチャーネットのほうのモフェットがウッドベースを掻き鳴らす。わけのわからない演奏だ。しかし、私の目当てはファラオ・サンダース〜ソニー・シャーロックというぶつかりあいがどうなるかということなので、それ以外のことはとりあえず目をつむろう。ファラオは1曲目から曲調とか無関係にフリークトーンを吹きまくるが、それを煽るのか邪魔をするのか、シャーロックがノイズをぶつけて、おおっ、すごいっ、となるが、そのうちファラオからソロを奪ってしまう。エルヴィンのソロはあくまでマイペース。ほかの3人がなにをやろうと俺は知らんから、という感じ。しかし、エルヴィンはあくまでエルヴィンだ。2曲目は、なんというかカントリー・アンド・ウエスタン的なところもあるバラードで、ファラオはリフを吹くだけ。チャーネットのベースソロがフィーチュアされる。なにがやりたいのかよくわからない演奏。3曲目は中華風な雰囲気もあるバップ(?)的なリフの曲だが、ソニー・シャーロックはどんな曲でもあの音色で蛇が石油のなかでのたうち回ってるような、超レイドバックしたノリのソロをするので、曲調はあんまり関係ない。これもなにがやりたいんだか。それがソニー・シャーロックなのだが。ファラオのソロもちゃんとフレーズをぐねぐね吹いていて、盛り上がりもせず、チャーネットの短いソロも同様で、結局なんのこっちゃよくわからないが、この曲がソロがしにくいということなのかも。最後はモフェットのランニングでフェイドアウトというわけのわからなさ。4曲目も、変な曲。もう、変な曲としか言いようがない。エルヴィンはこの曲がいちばん躍動的(3拍子系)だが、シャーロックは相変わらずめちゃくちゃで、だれやこのセッションにこんなギター連れてきたんは、あ、こいつがリーダーか……というぐらい変なソロをして、快感である。ファラオはなぜかソプラノを吹いており、ここはテナーでしょう、と思ったが、それはしかたがない。やはり、ぺらぺらした感じの変なソプラノソロ。そうか、このアルバムは「変なソロ」ということで統一感があるのか(そんなはずない)。でも、このソプラノが聴いているうちに快感になってくるのだ。案外、フレージングだけみたらテナーよりもいいかも。ああ、ファラオのソプラノに感心する日が来るとは。5曲目は、このアルバム最大の聞きものです。スピリチュアルな曲調にのって、ファラオがソプラノを吹きまくるが、これがちゃんとフリークトーンも出ていて、凄いのです。エルヴィンもこういう曲だと本領発揮。めちゃかっこいい。でも、テナーで吹いてほしかったな。もっとスクリームしたと思うけど。あと、欲をいうと、もうちょっとサックスをでかい音で録ってほしかった。この曲を一曲目にしていたら全体の印象も変わったと思うんだけど。ソニー・シャーロックのソロも爆発しています。エルヴィンも凄い。こういう曲ばかりだと良かったなあと思うのはまちがってるのだろうか。ラストは、エルヴィンのマレットソロではじまり、スペーシーというのか、不思議なリフを全員がバラバラに弾いたり吹いたりする。エルヴィンはひたすら、自分のソロを聴かせるような音量でマレットを叩きまくる。これはこれで凄いなあ。かっこいいと言ってもいいかも。というわけで、このえげつない顔合わせが大傑作、天下の名盤……とはならなかったのはそれはそれですごいことだと思う。いろんな意味で聴き所多し。エルヴィンのファンはともかく、シャーロックのファン、ファラオのファンは一度聴いてもバチは当たらないでしょう。不思議、不思議。不思議の音楽。