「PROMISES」(LUAKA BOP INC. PCD−94026)
SAM SHEPPARD
エレクトロニック・ミュージックのカリスマ的存在らしいサム・シェパードというひと(すいません。ほんまに無知で、知らないんです)のもうひとつの名である「フローティング・ポインツ」がファラオ・サンダースをフィーチュアして、そこにロンドン交響楽団も加わったアルバム……ということでいいのかな。ファラオはいつものファラオというか、最近、やや元気がないとはいえ、あのファラオ・サンダースで変わりはない。正直、音程とか伸びやかな高音などが健在なのは驚きでもありうれしいことである。フローティング・ポインツの方は、これは私が口を出せるようなもんではないと思うが、ものすごくわかりやすい音列と音色、リズム……など、私が日頃聴いているノイズにまみれたような音楽とはまったくちがうもので、現代音楽(とひとくくりにするのもどうかと思うが)のなかでもめちゃくちゃ聴きやすい、リラクゼーションというか癒しというか、そういう感じなのかと思える(このアルバムを聴いた印象は、ということです)。正直、そういうものにはなんの興味もないが、ファラオがそこに乗っかる、ということは、スピリチュアルジャズ的な方面の需要、なのだろう。あと、ファラオの一種の神格化か。「存在感が欲しかったのです」みたいなノリか。ファラオのサックスが出てこない箇所は、私には何度聴いてもゆるく感じ、ハーモニー的にもグサリとくるものがない(聴くひとが聴けば深いのだろうか)のでけっこうつらいのだが、このアルバムが「問題作」とか「圧巻の内容」「芸術的極上盤」とか「エレクトロニック・ミュージック・シーンのトップに君臨する男とスピリチュアル・ジャズ・シーンの伝説が相まみえた超問題作」とか評されるのはほんまにようわからん。自分の音楽的な「耳」にナイフを突きつけられたような思いでもある(まあ、しょぼい耳でしかないが)。なごみ、とか、静謐な音楽のすばらしさはある程度わかっているつもりだが、ここでのエレクトロニクス・ミュージックは……。口当たりのよい、わかりやすいものがダメということはまったくないのだが、これはさすがにきつい。古いオルガンミュージック的なものの再現が頭にあるのかなあ……。ビル・ラズウェルとの共作は静謐で、スピリチュアルで、変態で、ある意味先鋭的、前衛的なものだったように思うが、これはそういうものとはまったくちがっていた。ファラオのソロで7曲目の11分過ぎぐらいに、一瞬、おお、と思った箇所があるのが逆にしんどいなあ。あれはまさにほんまのファラオだったと思う。はっきり書くが、私はファラオ・サンダースの崇拝者であり、ファラオがなにを吹こうが元気でいてくれればそれでいいと思っている側だが、サム・シェパードというひとはわかっとるんかいな。といって、サム・シェパードの過去作を聴こうという根性もないので、ただ文句を言ってるだけみたいになるのは情けないですね。素人の妄言と思って無視してください。ファラオが今、リンクのメタルを吹いているのを確認できただけでも収穫ではあるが。