takeshi shimizu

「E.D.F」(IQUNISH RECORDS IQ−001)
E.D.F

 清水武志の曲をクインテットで演奏する、というのがコンセプトと思われる「E.D.F」の自主制作による一枚目のアルバム。ジャケット(と裏ジャケット)だけ見ると、どういう内容の音楽か、いや、音楽のCDかどうかすらわからない。メンバーも、楽器編成もなにもかも不明……という、ライヴで手売りをするためだけに作られたような、ぶっきらぼうな造りのアルバムだが、内容はじつに良くて、なにより清水武志の曲がどれもめちゃめちゃ良い。最初聴いたときは、曲の良さに比して演奏がおとなしめで、そのあたりがもの足らない感じだったが、何べんも聴いているうちに、これはこれでいいなあ、と思えてくる。つまり、個々のソロも、ライヴでの勢い一発のものではなく、何度も聴くことを前提とした、味わい深いものなのである。それだけの音楽性のあるメンバーを集めているということでもある。でも、次回はもう少し勢いに任せたような、聴き手をねじふせるような演奏も聴いてみたいとも思ったりして。

「SALVATION BY FAITH」
E.D.F

 久々の二枚目。リーダー清水武志の曲をクインテットで演奏する、というコンセプトは変わりないが、一枚目よりも全員がいきいきしているような気がする。いきいき、というのが変なら、のびのびというか自由というか。とくにテナー(とソプラノ)。作曲はどれもさすがで、ほれぼれする出来映えだが、その曲を5人がじつに理想的な形で「作品」にしているところが、おもわず「かっこいい!」と思ってしまう。派手なブロウや激しいバトル、驚異的な馬鹿テクなどがないかわりに、安定した味わいがある。しかし、その安定のなかに、じつはかなりの音楽的アドベンチャーが展開しているのである。一回聞いたら終わり、みたいな「プレイズ・スタンダード」的なアルバム(もちろんそのなかには良いものもあるが)が無数に出回っている昨今のジャズレコード業界だが、何度も聞き返せるこういった深いアルバム(しかも手作り感満載)こそ多くのひとに聞いてもらいたいものです。なお、レーベルとかレコード番号がないので記載しません(これは流通しにくいやろなあ……)。

「LIVE AT KOZAGAWA」(FOLLOW CLUB RECORD FC001)
E.D.F

 清水武志率いるE.D.Fのライヴ。録音はちょっと古いが、演奏のポテンシャルは相当のもの。全曲、清水武志のオリジナルだが、めちゃめちゃいい曲ばかりで驚く。サックスの武井は、テナーもいいけど、ソプラノがじつにいい味を出していて、ときにストレート、ときに複雑なそのアドリブラインに聞き惚れる。トランペットの田中
も、いかにも伝統を消化したうえで個性を出しているし、無理をまったく感じない奏法に聞こえるのもいい(私にとってトランペットを聞くときのかなり大きな判断材料)。また、ライヴなのに雑なところが一切感じられず、すみずみにまで気配りがいきとどいた演奏なので、何度でも聴けるし、そのたびに新しい発見がある、という理想のアルバム。「端正」という言葉が浮かんでくる。それぞれのソロは熱いし、リズムセクションもそれをプッシュしているのだが、熱いなかにも端正さが感じられる。それって、悪いことではまったくないです。録音状態もよくて、テナーやトランペットの音がみずみずしく輝いているのがわかる。いいバンドですなー。こういうのがあるんだから、ブランフォードとかジョシュア・レッドマンとか高い金出して聴く必要なんかないのでは? とまで思ってしまいます。日本の誇るコンテンポラリージャズグループである。