suetoshi shimizu

「ホットケーキ・ミックス」(AKETA’S DISK AD−17)
SHIMIZU SUETOSHI・MELANGE

 テナーの清水末寿の(たぶん)唯一のリーダーアルバム。このひとはこののち、広島で音楽活動をしているはずで、私の知り合いのU氏が広島在住時一緒にバンドをしていたらしい。本作は、ドラムに沢田奈津美、ドラムに小山彰太……という豪華メンバーで、清水末寿のオリジナルを中心に独自の世界を作っている。このひとのテナーはポキポキしたリズムと、ベローッと腰砕けしたようなリズムの両方があり、ちょっとつかみどころがないようなノリである。また、音色も個性的で例えが変かもしれないがハンク・モブレー的なちょっと丸い、ひしゃげたような音である。つまり、音もフレーズも非常に独特で、しかも、音楽的にも独特なのだが、この個性を好きか嫌いかで評価はわかれるかもしれない。ちなみに私は好きです。なんとも「日本のテナー吹き」という感じがする。このアルバムはたぶん、フリーからサンバまで、いろんなことを一度にしようとしたのだろう、ちょっととりとめのない内容になっており、もっとやりたいことを絞ればよかったのかもかしれないが、個々の曲は立派な出来である。おそらくライヴなどではもっと方向性のはっきりした演奏をしているはずで、そういったものも聴いてみたい。そう思わせてくれるような、たいへん独特なテナーマンである。日野さん、池田芳夫さんの作品への参加が有名だが、中村達也とのカルテットや沢田奈津美のリーダー作への参加もあるらしいので、それらをぜひ聴いてみたい。ジャケットがすごくいいのだが、これってぜったい日清には許可は得てないような気がする。