yasuaki shimizu

「JAZZ LIVE」(COLUMBIA COCB−54146)
JAZZ

 清水靖晃引きいる、その名も「ジャズ」のライヴで、私が大学2年生のときに出たものだが、当時はめちゃくちゃ期待したが(なにしろマライアやカズミバンドでの清水靖晃のテナーが大好きだったのです)、聴いてみて、うーん……こんなんかあと思った記憶がある。それはおそらく、このメンバー(当時は過激なフュージョンをやってるひとたち+スタジオのひとたちという認識で、つまり和製ステップスみたいなもんだと思ってた)が4ビートジャズをやるということで、しかも、「チュニジア」と「オール・ザ・シングス……」をやるのだからさぞかし凄いのだろう……と思ったのだろう。そういう「スタンダードへのアプローチ」を聞きたかったのだと思う。あわよくば、ぜひ参考というかパクりたいという気持ちで聴いたわけだが、聴いてみると、1曲目の「チュニジア……」は、テーマがはじまるとすぐに英語のナレーションがかぶり、1分ほどで曲は終わってしまう(テーマのみ)。なんじゃこれは、と思っていると、つぎの曲(オリジナル)がはじまるが、曲というか、フリーな爆発ではじまり、清水のテナーが延々ゴリゴリのソロをとり、そのあと笹路のキーボードが同じくゴリゴリのソロを展開する。学生としては、なんやこんなんかあ、16を4ビートにしただけで、中身は一緒やん、と思ってしまったのだろう。「オール・ザ・シングス・ユー・アー」は非常に正攻法な演奏だが、清水はなんというか、その場その場のコードと思いつきでたわむれているような、茫洋としたアプローチで、これも「まるで参考にならんがな」と思ったのだと思う。それはジャズ喫茶で新譜として聴いたのであって、その後聴くこともなく幾星霜だったが、今回こうしてマライアその他がどどっと再発されるなかに本作も入っていたので、思わず購入し、超久しぶりに聴き直してみると……まあ、だいたいは予想がついていたが、めちゃくちゃよかった。清水さんはこのあと、こんな風なストレートアヘッドな「テナーでブレッカーみたいにゴリゴリ吹く」というやり方をやめてしまったので(あくまで私個人の感想ですが)、こういう、なんのてらいもなくフルトーンで徹頭徹尾吹きまくる清水靖晃というのはこのあたりの音源を聴かないと味わえないし、笹路さんのソロも、一曲目、じゃなくて2曲目のマイルスバンドでキースジャレットがぶちぎれたようなド変態的キーボードソロは最高だし、それ以外のアコースティックピアノでのリリシズムあふれるテンションの高い粒だったソロもすばらしい。ベースとドラムも今聴いてもかっこいい。英語のナレーションがかぶる、というのも当時の4ビートジャズにおいてはものすごく画期的だったと思う。たぶんあと1年ぐらい後に聴いていたらものすごくはまったのではないかと思う(そのころはさすがにそこそこわかってきていたはずだ)。しかし、音楽の出会いは一期一会なのでしかたないのだ。私の耳がアホだったというだけだ。今こうしてしみじみ聴いてみると、彼らのやる気が痛いほど伝わってくるし、日本のジャズが到達していた高みもわかるし、その後の展開というか変貌も理解できるし、まさに生まれるべくして生まれたグループであり、アルバムであると思う。そして、当時の私がこれをよくわからなかった理由も、今なめるように聴いている理由も同時にわかってしまうのだ。傑作。