「PLAYS THE MUSIC OF CARLA BLEY」(A WATT PRODUCTION WATT/4)
ORCHESTRA JAZZ SICILIANA
これはカーラ・ブレイのバンドではなくて、イタリアのオーケストラ・ジャズ・シシリアーノがカーラ・ブレイの曲ばかりを演奏したもの。アレンジはジェフ・フィールドマンだが、全曲カーラ・ブレイがコンダクションをしているようだし、ゲストプレイヤーとしてスティ―ヴ・スワローとゲイリー・ヴァランテの名が挙がっているというめちゃくちゃ気合いの入った一枚。さすがにきっちりと人数をそろえたオーケストラで演奏されると迫力もひとしおでありますね。ゴージャス感に満ちている。どの曲も、フィーチュアされるソロイストのいずれもが実力派で、聴きごたえのあるすごいソロをするし、オーケストラとしての実力もすごすぎる。イタリアン・インスタビレ・オーケストラを思わせるようなソロイスト兼アンサンブル担当が集結したバンドなのだろう。カーラ・ブレイの書くあまりにバラエティ豊かな曲に、多種多様な個性派ソロイストを並べて、まさに「カーラ・ブレイの世界」を作り上げている。しかし、これはないものねだりかもしれないが、カーラ・ブレイの音楽からいつも濃厚に感じられる毒気のようなものが薄いような気もする。そのあたりをゲストのゲイリー・ヴァレンテ(トロンボーンソロは全部ヴァレンテが取っていて、オケのトロンボーン奏者はひとりも吹いていない)やスティーヴ・スワローらが補強している……という感じか。それにしても「ええ曲ばっか」ですね。2曲目のカーラ・ブレイとメンバーのやりとりも面白い。カーラ・ブレイの世界であると同時に、カウント・ベイシーなどを聴くみたいに普通のビッグバンドジャズとしても聴けてしまう。傑作。