frankie lee sims

「WALKING WITH FRANKIE」(JASMINE RECORDS JASMCD 3066)
FRANKIE LEE SIMS

 こういうひとに関しては本当にうといのだが、小出斉さんが「鼻づまり気味の声を唾が飛びそうな勢いで吐き散らし、ベカベカした音のエレキ・ギターをこれも下卑た調子で弾き散らす。そのきっぷの良さ、乾いた感じがたまらない」「その下品な痛快さはライトニン・ホプキンスとも並ぶほどだ」と書いておられるのがまえまえから気になっていて、とうとう購入してしまった。小出さんの文章はスペシャルティの「ルーシー・メイ・ブルース」についてのものだが、探したけど中古がかなり高価だったのであきらめ、ベスト盤的な本作を。本作はブルー・ボネットからの4曲に、そのスペシャルティ録音6曲、エース8曲、未発表音源11曲……という構成である。「ライトニンと並ぶ下品な痛快さ」といわれると聴くしかない。しかし、ブルー・ボネットからの4曲を聴いたときは、めちゃくちゃちゃんとしたひとのように思えて、下品とか鼻づまりの声がどうのとかいうことはないのでは、と思ったが、スペシャルティ録音の部分を聴いて「なるほど」と納得した。これがフランキー・リー・シムズの真骨頂なのだろう。たとえばエース録音の曲などは、ウィリー・テイラーというテナーサックスのひと、ピアノ、ベースなどがついて、ちゃんとしたバンドサウンドで、ボーカルもしっかりしていて(ライトニン的なダーティーさは感じられない)、これはこれでめちゃくちゃかっこいいのだが、たしかにスペシャルティ録音の曲「ルーシー・メイ・ブルース」「アイム・ロング・ロング・ゴーン」などはたしかに声も濁っていて、全体にラフでタフなテキサスブルースという感じで突出している。ただ、ライトニンよりはるかに落ち着いている感じで、このどっしりとつむいでいく感じは好きだ。テナーサックスのウィリー・テイラーというひとがすごくいいんだけど、調べてもどういう経歴かわからん。ローカルなミュージシャンなのか、それとも私が知らんだけで有名なひとなのか。あと、19曲目以降の未発表だった音源はシンプルでどれもすごくて、たとえば19曲目の「マリード・ウーマン」というブギとかすごくないっすか? ボーカル(とギター)が非常にリアルに録音されていて、迫力あります。これからも、知らないひとをどんどん聴いていきたいと思う。これはスペシャルティ録音の全曲集をなんとかして入手しないとなあ……。