lightnin' slim

「ROOSTER BLUES/LIGHTNIN’SLIM’S BELL RINGERS」(EXCELLO 2 ON 1 ACE RECORDS CDCHD 517)
LIGHTNIN’SLIM

 エクセロの二枚のカップリング盤。「ルースター・ブルース」の方はヒットした「ルースター・ブルース」をタイトル曲にしたアルバム。ルイジアナブルースはゆるい、という意見が多いが、スリム・ハーポの項でも書いたけど、あんまりそういうのはわからん(たとえばアール・キングがゆるいのはよくわかる)。どちらかというとヘヴィでかっこいい。たしかにちょっと田舎くさいというか、エッジが立っていないというか、シャープさに欠けるようなところはあるかもしれないが、その分、鉈でぶった切るような重いブルース衝動を感じる。それは「ゆるい」というのとはちょっとちがうような気がするが、私にはすごく好ましい。ブレイク過多(?)のこのリズム感は決してゆるくは聞こえないし、ライトニン・スリムのちょっとへしゃげたような濁ったボーカルもゆるいかなあ……。「ちょうどええ」感じである。とはいうものの、ずっと聴いていてようやくブルース門外漢の私にもわかってきたのは、ライトニン・スリムの音楽がなぜ「ゆるく」聴こえるかというと、やはりベースやピアノがいない、ということがひとつ、もうひとつはボーカルがシャープではない、ということだと思う。結局、ギターの弾き語りにハープがちょっと入って、ドラムはリズムキープだけ……というのがゆるい感じに聴こえるのだと思う。でも、そこがいいですよね。「ブロウ・ユア・ハープ、サン」(〜サンというのはこのひとの口癖)という歌のあとハーモニカソロ(レイジー・レスターが多いみたい)をうながすのがかっこいい。ドラムとハープと自身のギター、ボーカルという三人、という編成がなんとも潔い。このスカスカの音はくせになる。「ルースター・ブルース」の方は、全曲素晴らしい。そのものずばりの「フー・ドゥー・ブルース」という曲もあるが、ほかの曲の歌詞でもブードゥー系の言葉が出てくるのが、ルイジアナという土地の特徴なのか?(「トム・キャット・ブルース」とか)スローもいいけど、ミディアムファーストの曲のノリがすばらしい。4曲目の「G.I.スリム」という曲は「フーチー・クーチー・マン」のパターンか? 「イッツ・マイティ・クレイジー」という曲はR&Bっぽいノリ。イントロがまったく同じ曲があったりして笑える。
「ベル・リンガー」の方はベース(セカンドギター?)、ピアノ(オルガンも?)などが入っているトラックもあって、そういう曲は「ルースター・ブルース」よりはずっとバンドとしてしっかりしている(ギター、ドラム、ハープだけの曲もあるけど)はずなのだが、聴いた印象は同じで、なるほどなー、これが「ライトニン・スリムはゆるい」ということか、と思った。ミディアムスローの「ウィンター・タイム・ブルース」とかとにかくめちゃくちゃかっこいいです。「イフ・ユー・エバー・ニード・ミー」のようなブルースではないポップな曲も入っている。サニー・ボーイの「ドント・ストップ・ミー・ア・トーキン」もノリノリでかっこいい。全体的に小賢しいことは一切せず、ひたすらシンプルに我が道を行くこのノリはすばらしいですね。