lonnie smith

「LIVE JAM!」(BLUES INTER ACTIONS PCD2401)
THE JAZZ FUNK MASTERS FEATURING LONNIE SMITH

 ロニー・スミスが来日時に次郎吉に飛び入りしたときの模様を収録したライヴアルバムだそうだ。当日、店ではジャズ・ファンク・マスターズという吾妻光良、梅津和時らによるバンドが出演しており、ロニー・スミスはその2ステ目の最後あたりに登場して数曲弾いたあと、3部目では彼を中心とするバンド、という感じのメンバー〜セッティングになって、ロニー・スミス・ジャムみたいなものが行われた。本作はその3部を収録したものだ……という解釈でいいのかな。片山広明、佐野康夫も加わってのクインテットによる演奏だが、なにが凄いって、主役であるロニー・スミスのオルガンである。いやー、これはええんちゃう! ソロにバッキングに縦横無尽に鍵盤やフットペダルを駆使して弾きまくり、猛烈なサウンドをハモンドから引きずり出している。もちろんメンバーに恵まれたということもあるだろうが、いやはや、オルガンのすべてを知り尽くした男って感じですね。すばらしい。ゴージャスで、洒落てて、ブルース衝動の塊で、エグくて、ポップで、ジャズで……もう言うことなし。共演者のなかでは吾妻さんのギターも、ほんとすばらしい。ブルースだけでなく、ジャズやその他の音楽も熟知したこのひとの存在がリズムセクションにいたことがこのアルバムのクオリティをぐっと高めている。2サックスも、まず、その音色がこのセッションにばっちり合っているし、ドラムもこういう古いファンクにぴったりで、興奮しまっせ。でも、かなり粗い部分もあって、構成やソロ回しの中身などはけっこうぐだぐだなところもあったりするが、なにしろタイトルを見よ、「ライヴ」で「ジャム」ですからそこは大目に見よう。それを差し引いてもあまりある一発こっきりのライヴの盛り上がりがちゃんとこのCDには収められているのだから。ラストに入っている「マイルストーンズ」もロニー・スミス流の解釈がちゃんとハマッていてかっこいいっす。ジャズ・ファンク・マスターズ名義のアルバムで、ロニー・スミスはゲスト扱いではあるが、明らかにスミスがリーダーシップをとっているので、便宜的にロニー・スミスの項に入れた。

「THINK!」(BLUE NOTE RECORDS BST84290)
LONNIE SMITH

 まだ、ロニー・スミスの初期(リーダー作としては2枚目)アルバム。コロンビアでの初リーダー作がめちゃくちゃ豪華なメンバーだったが、本作もリー・モーガン、デヴィッド・ファットヘッド・ニューマン、メルヴィン・スパークスに3人のパーカッション……となかなか豪華である。1曲目はヒュー・マサケラの曲で曲もアレンジもめちゃくちゃかっこいいうえに、ソロイストも皆いいソロを重ねており、すばらしい演奏だと思うが、なにより全体のリズムの勢いというか迫力が凄まじい。怒涛のように押し寄せる。そして、このグルーヴ! 本当にノリノリで、なんというかジャズオルガンというより歌のないソウルミュージックというかファンクというか、ジミー・スミスとかとはまるで違う新しい感じで、俺たちゃこういうの大好きだもんね感がひしひしと伝わってくる。2曲目はスミスの曲で、パーカッション軍団をフィーチュアしたド迫力のナンバー。ひたすら情熱的なリズムを提供するリズムセクションには呆れ果てるぐらい。バラードみたいにはじまり、そこから狂熱のモノホンラテンな展開になり、最後はイクところまでイッて、またバラード的に終わる。一種の組曲のような感じもあるが、とにかく「リズム」ですよ。B−1はタイトルにもなっているが、そう、アレサ・フランクリンのあの曲だよーん! リー・モーガンがこの曲をなあ……と思うと感慨もひとしお。マリオン・ブッカーのいなたいドラムとハモンドB−3のぴらぴらした音が何とも言えない。そして、2管のクレッシェンドであのコーラスが再現される。ロニー・スミスの豪快なソロのみがフィーチュアされるが、リフを重ねるたびにどんどん盛り上がっていくようなエネルギーに圧倒される。ラストはフェイドアウト。B−2はイギリスのわらべ歌(マザーグース)のひとつをアレンジしたもので、こんな風にするとジャズの曲にしか聞こえない。ラストのB−3はコンガが絶妙の間合いで鳴り響く曲でエコーがかなりかかっている。音と音のあいだがスカスカでめちゃくちゃ気持ちいい。メルヴィン・スパークス、モーガン、ニューマン、スミス……と最高のソロが続くが、とくにリー・モーガンのねちっこいノリのソロは素晴らしいの一言である。しかし、重量級の曲ばかり続くと、こんなジャズロックでもけっこう軽く、爽快に感じるなあ。丁寧に作られているうえ、全員がノリまくっている傑作。

「LIVE AT CLUB MOZAMBIQUE」(BLUE NOTE/CAPITAL RECORDS CDP 7243 8 31880 2 4)
LONNIE SMITH

 ロニー・リストン・スミスといつも間違えてしまうロニー・スミス。このころはまだ「ドクター・ロニー・スミス」ではなく、ただの(?)ロニー・スミスだった。本作にも入ってるテナーのデイヴ・ハバードはどちらとも共演しているのでよけいわかりにくい(聴いたらすぐわかるのですが)。本作はライヴで、メンバーは超強力。2サックスがフロントで、やはりロニー・キューバーはめちゃくちゃ上手いがハバードも決して負けてはいない。この、タメを張り合う2サックスの魅力は本作の大きなウリである。ジョージ・ベンソンもソロにバッキングに大活躍。そして、ドラムのジョー・デュークスもこの手のジャズではおなじみだが、ここではバンドを鼓舞しまくっており、めちゃくちゃかっこいい。リーダーのスミスは、とにかくなんというかトリッキーなフレーズを弾きまくるのだが、リズム的にもすごいし、正攻法のソロだけでなく、オルガンの裏技みたいな武器をつぎつぎ繰り出してくるので圧倒されてしまう。もちろんバッキングもすごい。パーソネルにはコンガ奏者とタンバリン奏者が入ってると書いてあるがあまり聞こえない。ときどき入るボーカルはロニー・スミス自身なのか?やや甲高い細身の声で、ちょっとオルガンのイメージと違うのでとまどう。ロミー・スミスはなにしろ活動歴が長いので、アルバム数も相当の量だが(私はテナーが入ってるやつ以外はほとんど聴いてないかもです)、本作はライヴということもあってかなりの熱量がある演奏ではあるが、メンバーのすごさもあって、けっして雑な、大味な演奏になっておらず、クオリティは上々だ。つぎつぎ登場するソロイストによるあの手この手の濃厚なソロに酔い、最後は全員一丸となってのファンキーな突撃にひっくりかえる……という感じ。オルガンジャズがどんどんファンク化していくなかで、この作品などは、R&B的なファンクネスとジャズ的なアドリブのスリルが融合した傑作だと思う。おんなじような曲ばかり延々続く、という意見もあるだろうが、これこそがこういう音楽の魅力……というべきではないか。酒飲みながら聴いて、「ええやん」「かっこええ」「ノリノリやん」というには最適だと思うが、各人のアドリブをジャズ的に味わうのだったら一回に3曲ぐらいにしておいた方がいいかもしれない。しかし、このコテコテさというか濃厚でしつこいギトギトした味わいを堪能できないと、たしかにこういうやつ(とひとくくりにしてはいかんが)とはつきあえんかも。私ですか? 私はもう慣れました。しかし、たとえば1曲目のファンク曲なんか、オーネット・コールマンのプライムタイムだと言われたら「そうか」と言ってしまいそうなほど、リズムがカラフルだ。スミスのオルガンは、リズムをもてあそぶというかリズムとたわむれるというか、カラフルかつタイトなリズムのうえでいろいろリズムの実験をしているような感じで、非常にスタイリッシュだ。8曲目はマイルスの「セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン」で、パリのアメリカ人的なイントロのあと超アップテンポのテーマになり、ソロ回しになるが、この速さで全員が乗り遅れたりすることなく、ブリブリ吹きまくり、弾きまくっているのはすごいと思う。この曲の演奏としてはめちゃくちゃ明るい部類に属するのではないか。個人的には、ロニー・キューバーがすごいのはもちろんだが、デイヴ・ハバードというテナーのひとの凄さがよくわかった。傑作。