satoshi sonoda

「耳抜き」(MODERN MUSIC(P.S.F RECORDS PSFD−203)
園田佐登志

 まったく予備知識がないので、とりあえず先入観なしで聴いてみて、そのあとライナーノートを熟読したのだが、ものすごく興味深かった。1、2曲目はサウンドコラージュのような感じだが、ターンテーブルでの即興でよくあるような演奏の先駆なのかもしれない(ちがうかもしれない)。真剣に聴いているといろいろ想像できてすごく面白い。3曲目は荒っぽいベースの反復とそこに載るヴァイオリンやノイジーなギターなどによる演奏。ワンコードでのセッション的な、ある意味普通すぎるぐらい普通の演奏で、狂気も前衛性もないような雑いものなのだが、そこに痛々しいぐらいの暗い影が感じられて、たいへん魅力的である。4曲目はおもちゃのピアノの単音に導かれてはじまり、そこに素朴な(下手なといってもいい)リコーダーがユニゾンでからむあたりの冒頭部のいかがわしさはなんともいえない。そこにクラリネットやチェロや胡弓が入り、合っているようないないような、独特の崩れ方、というか腐り方が味わえる独特の音楽。5曲目は、これは本当にすばらしい、狂気のポップス。録音は悪いけど、超魅力的。単純すぎるほど単純なメロディ、ピアノだけの伴奏でも、ボーカルの爆発によってここまで音楽はおもしろくなるのだな。6曲目はこれも録音が悪いせいかボーカルの歌詞がよく聴き取れないが、曲も歌詞もなんとも耳に残り、上手いのか下手なのかもわからない(わっ、ルナパークアンサンブルのひとだったのか。すいませんねえ。だってそう聞こえたんだもん)ボーカルがめちゃくちゃ魅力的で印象的な演奏。バンドの演奏(とくにドラムと園田のギター)はすばらしく、不穏なチェロもいい。7曲目の美しいメロディをヴァイオリン主体で反復していく曲の最後の最後に天気予報とかの音声がかぶるのだが、これが見事に溶け込んでいてびっくりした。こういうのもセンスが問われるなあ。8曲目はかなりアコースティックなフリージャズというか我々のなじんだ音楽に近いが、それもそのはずで黒田京子、池田篤、村田陽一、大友良英……というようなすごい面子が参加している(当時のORTのレギュラーメンバーだと思う)。センスだけでなく、やはり上手さも際立っている(とくにトロンボーン)が、おもちゃ箱をひっくり返したようながちゃがちゃした楽しさはこの曲でも感じられる。コンポジションがしっかりとあって、最後のほうで出てくるサックスソロからの集団即興への流れがなんともいえない。ラストの9曲目は、ブツブツというノイズや、ひとのしゃべり声や口笛のような音、わけのわからない叫び……などを背景として、ヴァイオリンやハーモニウムの淡々とした物悲しいメロディが流れていくのだが、これが言葉で表現しにくいような魅力、というか魔力があるのだ。サックスソロのあと明るい展開もいい感じです。というわけで、このアルバムに収められた音源からはブラックマジックのような、ひとを引き込む魔力を感じた。いいものを聴けました。