「TERM & CONDITIONS」(AUDIOGUIDO RECORDS)
GUIDO SPANNOCCHI
全然知らんひとなのだが、ディスクユニオンの通販ページに「カミソリのようにヒリヒリとして危うい雰囲気……。人気のない薄暗いストリートで行き場のない音を吹きまくるアヴァンギャルドジャズ」と書いてあったのを見て、思わず購入してしまったのだが、実際聴いてみると、まるで異なった印象を受けた。この文章からだと、楽器が鳴りまくっているような凄まじい音で吹きまくるような、はすにかまえたチープでスタイリッシュでイマドキのフリージャズなのか、と思ったのだが、どちらかというと、リー・コニッツのような柔らかい、クールな音なのだ。最初はあてがはずれて、「ありゃ?」と思ったのだが、何度か聴いているうちに、これがめちゃくちゃ快感になってきて、すっかり気にいってしまった。今やたいへんな愛聴盤になっている。いやー、これはええわ。かっこええわ。8曲中5曲はオリジナルで、あとはレスター・ボウイの曲とローランド・カークの曲(「ナウ・プリーズ・ドンチュー・クライ・ビューティフル・エディス」)で、自作曲のなかには「フォー・ジョー・ザビヌル」というタイトルの曲もあり、なかなか一筋縄ではいかないひとのようだ。アルト〜ベース〜ドラムという編成で、かなり硬質な音であまりハードに鳴らさずちょっと息を抜いた感じで丁寧に吹いていくスタイル。音色は好みがわかれるかもしれないが、ときにグロウルしたりフラジオを吹いたりフリーキーにブロウしたりするけど、基本的にはオーソドックスな吹き方だ。マイナーキーの、哀愁を感じるような曲が多い印象。ベースの印象的なリフのうえに音を積み上げているような曲作り。フレーズは、ときどきモダンジャズっぽいものや教則本的なものも出てきて、ごった煮感があっていい。「フォー・ジョー・ザビヌル」はかっこいい曲でたしかにザビヌルっぽい作風のような気もするが、自分で書いた曲のソロを自分でもてあましているような感じもあり、ほほえましい。曲としては5曲目の「ダーリン・キープ・ザット・ゴールド」という変態的な音使いの曲が気に入った。6曲目の「エンプロイメント」という曲もけっこう変だ。変な曲を書くひとは好きです。全体として、「これはこういう音楽です」と割り切れる感じはまるでなく、このグイド・スパノッチ(と読むのか?)というアルト奏者がこれまでに積み重ねてきた音楽経験が一気にここにぶちまけられているのだろう。面白いです。ベースは日本人の山田マオさん。傑作。