johnny sparrow

「SPARROW’S FLIGHT」(KRAZY KAT KK832)
JOHNNY SPARROW AND HIS B0WS AND ARROWS

 いやー、これはアドレナリン、じゃなくて、あなどれん。痩せた、貧相な風貌、スパロー(雀)という情けない名前、しょぼいジャケット……などからは想像もできないほどパワフルかつスウィンギーな演奏が詰まっている。ジョニー・スパローのゴッサム録音集である。ほとんどがワンホーンなので、このテナーマンの魅力が十分に伝わってくる。曲もいいし、バンドもけっこうタイトなのだが、やはりなんといっても主役であるスパローのブロウがすばらしい。音色よし、フレーズよし、リズムよしで、とくにフレージングは歌心あふれ、トリッキーな表現も含めて非常に多彩であり、聴いていて飽きない。ホンカー系のアルバムを聴いていていちばんつらいのは、だんだん飽きてくることで、それはホンクという音楽が気合い一発の一本調子のものだからしかたないのだが、それにしてもこれだけちゃんと吹けるひとは稀である。ビッグ・ジェイやジョー・ヒューストンといった専門ホンカーではなく、ジャズ畑を主たる活動の場所としているひとなのだろうなあ、と思ってライナーを読むと、ジェイ・マクシャンのビッグバンド(ジョン・ジャクソン、ポール・クィニシェットらと同期らしい)、ルイ・アームストロングのビッグバンドなどを渡り歩き、ライオネル・ハンプトンのビッグバンドにアーネット・コブと入れ替わりに入団して、同期入団のなんとかレインとともにテナーバトルを演じて有名になったひとらしい。もしかしたら、ハンプトンの古いビデオに映っている、ハンプトンを真ん中に挟んで、トロンボーンとふたりで楽器を上下に振りながらブロウしているひとかなあ。風貌はよく似ている。当時のサックスセクションのメンバーには、ほかにボビー・プレイターなどがいたらしいから、そりゃ鍛えられるわ。しかし、スウィング一辺倒ではなく、バップの香りも漂うモダンかつ流麗なフレーズを吹くひとで、ライナーではラッキー・トンプソンを例にあげているが、なるほど、という感じ。本作に入っている「インディアナ」など、ほとんど「ドナ・リー」的な解釈の演奏である。だが、この痩せたおっさんは、ブロウするときは根性のブロウをみせる。ダーティートーンで、ゴリゴリ吹き倒す迫力はたいしたもの。久々に聴き直して、おお、こんなに良かったのか、とびっくりした。おそれいりました。