ben stapp

「ECSTASIS」(UQBAR MUSIC)
BEN STAPP TRIO

 テナー(ソプラノ)〜チューバからドラムのトリオで、チューバがリーダーというのは、かなりおもろいことではないか。1曲目の最初のドラムのイントロから、もう期待が膨らんだ。そういうのって、わかりますよね。トニー・マラビーのソプラノもテナーもすごくよくて、たまに自分のリーダー作だとダレたりすることもあるが、サイドだからなのか、サイドにしてはなのか、適度にリラックスしていて、美味しいプレイを連発している。とくにテナーは、軽く吹いている感じでよい。ドラムは武石聡で、シャープでいきいきしたリズムを叩き出しており、このトリオの躍動感の源になっている。そして、リーダーのチューバは、正直言って、ほかのふたりよりもチューバのラインに耳が行ってしまうほどの存在感がある。クラシックや現代音楽もやるチューバ奏者らしいが、ソロのときの美しくも柔らかく力強い音色やたしかな音程がその技術を表している。インタープレイが重視された演奏で、そういう点でこのサックスとドラムをチョイスしたのだろうが、とにかく緊密でエキサイティングなやりとりがずっと続いている。チューバは、単純なラインではないが、かといってベースラインとリズムを提供するチューバの役割を放棄することなく、しかも、ずっとソロをしているみたいな「歌」も感じさせるという離れ業を同時にこなしていて、これはウッドベースやエレベよりもチューバが有利な点かもと思った。ソロをしているみたいな、と書いたが、これは実際、ソロをしている、ということなのかもしれない。しかしふたつのソロラインが同時にあってそれがからみ合う……みたいな感じではなく、やはりチューバのベースとしての部分はまったく損なわれることがない。すごいです。全曲ベン・スタップのオリジナルで、作曲の才能もめちゃめちゃあると思う。こういうアルバムを聴くと、すごいプレイヤーっていろんなところにいるもんだなあと感心する。私がこのアルバムを購入したのは、トニー・マラビーのチューバとのトリオというところにひかれたわけだが、これもひとつの出会いでした。ベン・スタップすげー。皆さん、このアルバムを聴くときは、サックスソロのときでも、チューバとサックスを同時に聴くようにしませう。