jason stein

「A CALCULUS OF LOSS」(CLEANFEED CF104CD)
JASON STEIN’S LOCKSMITH ISIDORE

 最初見たときは、「JASON STEIN’S LOCKSMITH ISIDORE」というのがアルバムタイトルかと思ったが(ディスクユニオンのホームページでもそうなっている)、それはまちがいです(ややこしいデザインなのだ)。リーダーのジェイソン・ステイン(と読むのか?)はバスクラリネットオンリーのひとで、ケン・ヴァンダーマークのアルバムにも入っているという(そうだっけ?)。そのひとのワンホーンで、あとはチェロとドラムという編成なので、なんとなく聴いてみたら、こっちが思っていた以上にシリアスでストイックな演奏なのだった。これまたディスクユニオンのページからの引用によると、「いや、いなたい。シカゴならではのブルーズ・フィーリングというやつですね。もう渋すぎて泣きたくなってきます」とあって、あれ? 俺の第一印象と全然ちがうぞ、と思って、もう一度全部聴き直してみたが、うーん……やっぱり全然そんな感じは受けなかったなあ。たしかにそんなタイプの演奏も入ってるといやあ入っているのだが、全体としては非常に真摯で抽象的なフリーミュージックだと思った。ただ、シカゴというキーワードで考えると、たとえばフレッド・アンダーソンなどの演奏は、まるでブルースではないが、いなたさとブルースフィーリングを感じさせるので、そういう意味で書かれているのかもしれないが。とまあ、音楽をストレートに楽しむというより、いろいろいらぬことを考えてしまった。そういう触発がある演奏だといってもいいかもしれない。私は非常に気に入りました。しかし、これ全部バスクラだけなのか。普通のクラリネットとしか思えないような音やサックスみたいな音も聞こえてくる。たいした吹き手だと思う。

「IN EXCHANGE FOR A PROCESS」(LEO RECORDS CDLR545)
JASON STEIN SOLO

 バスクラリネットのジェイソン・スタインのソロ。木管の響き、豊かな低音を前面に出したものや、サックスのようにフリーキーで激しいもの、ブルージーな音列を感じさせるものなど、バラエティのある演奏になっている。ジャケットも、何本かのバスクラをバラバラに分解して並べたもので、なかなかおもろい。聴くまえは、もっとテクニカルな内容かと勝手に思っていたが(バスクラ専門奏者というとクラシック出身のイメージがあるので)、本作はそうでなはなく、どちらかというと奔放なソロだった。そんなあたりも聴き所ではないかと思う。