peggy stern

「THE FUCHSIA」(KOCH INTERNATIONAL 3−7837−3 HI)
THE PEGGY STERN/THOMAS CHAPIN QUARTET

 ペギー・スターンとチェイピンの双頭カルテットということになっているが、曲は基本的にペギー・スターンが書いていて、チェイピンの曲は1曲だけである。じつはペギー・スターンというひとのことは良く知らないが、経歴を見るかぎりでは、共演者は非常にオードックスである。そんなひとがチェイピンと合うのか?と最初は思っていたが、聴いてみてびっくりするぐらいペギー・スターンの書く曲にチェイピンがはまっているのだ。1曲目の、ブンチャッ、ブンチャッ……という印象的なリズムを持つ曲のテーマの吹き方、それに続くソロの昂揚など、めちゃくちゃかっこいいし、ふたりの相性はぴったりである。ほかの曲もどれもすばらしく、スターンのコンポーザーとしての能力の高さがよくわかるが、チェイピンがそれらを見事に自分のやり方で表現していて、感動的ですらある。とにかくチェイピンというひとは音色といい音圧といいフレージングといいここぞというときのブローといいスケールを吹くときの安定感といいスピード感といいすべてが「心地よい」タイプのアルトだと思うが、そのいつもの心地よさがペギー・スターンの曲によって増強されている感じだ。10曲全てが名曲・名演といっていーんじゃないでしょうか。あ、そうそう、(たぶんペギー・スターンによる)アレンジも良いです。いやー、けっこうヘヴィーローテーションで聞いたのだが、何遍聴いてもチェイピンの熱血ぶりがずどーんと伝わってくる傑作だった。チェイピンのフルートもすばらしいです(とくに4曲目。えぐい)。ドラムは知らんひとだが、ベースはドリュー・グレス。傑作。惜しむらくはジャケット。