「JOA」(STONE FLOOR RECORDS SFR004CD)
JON RUNE STORM
まことに申し訳ないが、このひとの「STORM」の「O」は本当は線が入ったやつなのだが、これがうちのパソコンでは大文字で出ないのである。タイトルの「O」もそうなのだが、出そうとすると環境依存文字なので置き換えます……という表示になってしまう。まあ、しゃあないけど。というわけで、これはフローデ・イェシュタ・トリオのライヴの物販で購入。イェシュタはたくさんアルバムを持ってきていたが、じつはこのひとはアルトなのでさほど関心がなく(すいません)、買ったのはこのヨン・ルーネ・ストレムのベースソロアルバムのみ。しかし、これがめちゃくちゃよかった。ライヴでも、ニルセンラヴが凄いのは当たり前としても、この若いベーシストのプレイが光りまくっており、ウッドベースからこんな凄い音が出るかなあと呆れるようなド迫力の演奏だったので、それで購入したわけだが、いやー、ばっちりでしたね。ただのウッドベースソロではない。ウッドベースからさまざまな音色を引き出してひとつのオーケストレイションを構築するようなソロをするひとはこれまでもたくさんいたが、ストレムがそういうひとと一線を画すのは、たとえば絃をばちばちと弾いてエッジの立った音を出すことによって戦車のようなリズムを作り出す。そういう奏法を基本に、そこにさまざまなノイズやらハーモニクスやらを加えていき、ウッドベース一本でフローデ・イェシュタがサックスで咆哮するような、あるいはニルセンラヴがドラムで狂乱のリズムを叩き出すような……それに匹敵する迫力あるソロをするという点である。もちろん、普通のジャズベース的な即興もあるのだが、全体として、なにかを伝えたいという激しい思いが伝わってきて、説得力がある。それに、こういう演奏はセンスがないとアホみたいだが、たとえば絃を軽く叩いてパーカッションみたいな音を出す奏法だけで一曲まるまるやりきってしまったりするのだが、やはり「聞かせる」のだよな。聞いていて飽きないし、もっと聞きたいと思わせるだけの面白さ(エンターテインメントとしての)もある。センスって漠然と言われてもわからんよ、という向きもあるだろうが、それは私にもわからん。とにかく面白いのである。多くのウッドベース奏者が、ベースを壊れやすい楽器のように大事に大事に弾いているのに比べ、このひとはそのあたりのクラシック的感覚をぶち壊そうとしているように思えるのも快感なのかもしれない。ジャケットも秀逸。