「BILLY STRAYHORN LIVE!!!」(ROULETTE RECORDS BIRDLAND SERIES−3/YS−2693−RO)
BILLY STRAYHORN
ルーレットがバードランドから放送録音したものを音源としてレコードにしていたシリーズの一枚で、もしかしたらベイシーの「アット・バードランド」もそうなのかも(よく知らん)。ジャケットはなかなか印象に残る。不思議なアルバムで、エリントンの影武者(?)的存在というか片腕というかエリントン楽団のアレンジャーであるストレイホーンが主役になっている……はずなのだが、ストレイホーンがピアノを弾いているのか、それともエリントンなのかすらよくわからないらしい(ライナーによると、エリントンがメンバーにいろいろ指示する声が入っているらしい)。エリントン楽団のピックアップメンバーによる演奏であることは間違いないと思うが、一応全部オーケストラ形式での演奏で、とにかく全体にジョニー・ホッジスを大々的にフィーチュアしていて、ホッジスのリーダー作のようである(ホッジスも、よくエリントン楽団のピックアップメンバーと自己のリーダー作を作っているので)。選曲的にもストレイホーンの曲は1曲しか入ってないのだ。しかし、出来映えは最高で、音質も(部分的に)よくて、ホッジスはもろんハリー・カーネイ、レイ・ナンスなどの音がすごくリアルに録音されていて、学生時代にはじめて聞いたときは狂喜した。A−1は「昔はよかったね」で、シャッフルに乗ってゴージャスなエリントンサウンドがぶちかまされる。いきなりホッジスが軽ーーーーい感じでソロをするが、これがまた洒脱というかなんというか、いい感じなのである。ときどき音を長く吹き伸ばす時のベンドというか持ち上げる吹き方だけでも何杯でも飯が食える。2曲目はこれもおなじみ「ジープス・ブルース」でホッジスはソロもしているがアンサンブルのリードアルトもしていて、このリードが絶妙でそれだけでも何杯でも飯が食える。いやー、すばらしすぎる。まさにオルガンアンサンブル。この曲とB−3でのソロがホッジスの本作中の白眉かも。A−3はショーティー・ベイカーのトランペットとレイ・ナンスのヴァイオリンをフィーチュアした、ほんわかしたノリのリフ曲。アンサンブルも必要最小限。このひとたちにしてはけっこう長尺の演奏(7分)だが、終始楽しく展開する。最後のテーマのとき「ぐわっ」とチャチャを入れるプランジャートロンボーンがええ味。4曲目はこれもおなじみ「イン・ナ・メロー・トーン」で、あいかわらずカーネイのバリトンを中心にしたテーマのアレンジがかっこいい。こういう曲でバリトンにリードを取らせるというのもエリントン楽団の変なところ。この曲はかなり凝ったアレンジで、プランジャーのトランペットとアンサンブルの対比で盛り上がったあと、ホッジスのアルトが軽快に吹きまくる。B−1は「オール・オブ・ミー」で、アンサンブルはほとんど添え物でホッジスがテーマ自体を崩しながら吹くという趣向。それがなんともいえないんですよね。B−2は「ソフィスティケイテッド・レディ」で、ハリー・カーネイのショウケース。ものすごくリアルな音で録音されていて感涙。テーマを変奏しているだけなのかもしれないが、それで十分。圧倒的な「芸」であり「芸術」であると思う。最後は例によってのサーキュラー。B−3は「パッション・フラワー」で、ホッジスのすばらしさが凝縮されたような完璧な演奏。アンサンブルに埋没するかのごとき小さな音ではじまった演奏が次第に圧倒的な音量になり、アンサンブルを凌駕する凄まじい咆哮になっていて驚くのだが、その美しさ、冷徹さ、繊細さはいささかも変わらないのだ。ときにはダーティートーンでブロウをぶちかましまくるホッジスだが、ここでは最後まで抑制のきいたプレイに徹していて最高である。ラストのB−4は「サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」でここでもホッジスがひとりでテーマを吹く。ソロも落ち着き払っていて、同じフレーズの繰り返しを淡々と重ねていき、次第に崩していき、まるでバップのように16分音符で吹きまくる。「これでどう?」とニヤリと笑いながら言われてる感じがするが、「最高です」と答えるしかない名演であります。個人的には(ジャケットに大写しになっているアルトのせいもあって)ジョニー・ホッジスのリーダー作的扱いをしております。傑作。