「RE−ENTRY + 2」(OCTAVE−LAB/ULTRA−VIBE OTLCD2632)
CHARLES SULLIVAN
悠雅彦氏のホワイノットから発売されたアルバム。ウディ・ショウを筆頭に、チャールズ・トリヴァーらとともに70年代を代表するトランぺッターであるチャールズ・サリヴァン。この録音時はまだ22歳(!)。この張り詰めたテンションの高いプレイには、この時期のウディ・ショウやトリヴァーだけでなく、ビリー・ハーパー、本作にも参加しているルネ・マクリーン、カーター・ジェファーソン、ゲイリー・バーツ……といった管楽器奏者たちに共通するある種ぴりぴりしたような緊張感が伝わってきてそれだけで感動する。サリヴァンの演奏は、正直22歳とは思えないテクニカルかつパッショネイトなもので、聴くたびに「ああー」とため息がもれるほどすばらしい。共演のケニー・バロン、バスター・ウィリアムス、ビリー・ハートらも凄まじいプレイでそれに応えており、個人的にはずっとジャズ史に残る名盤だと思っていたが、ライナーを読むかぎりではそうでもないらしい(注目を受けることはなかった、と書かれている)。「ボディ・アンド・ソウル」以外はオリジナルでかためた意欲作であり、この直情的表現を聴いて感動しないひとはいないと思うのだが……そういう意味でも悠雅彦さんの仕事は偉大だったと思う。我々はそのおかげでこうしてこの凄まじい演奏を聴くことができるのだ。1曲目のストレート・アヘッドな表現は小細工をしないズドーン! というパワフルな演奏のなかに繊細な表情もすべてぶち込んでいてすばらしい。2曲目の「ボディ・アンド・ソウル」のイントロの無伴奏ソロ(別テイクのほうもすごいよ! OKテイクよりもかなり長尺ですが最高の演奏!)から朗々としているが甘さのかけらもないバラードプレイなど、ウィントン・マルサリスの初登場のころに比べてもまるで遜色はない。繰り返すが「22歳」ですからね! すごいよなー。安定感のある中音域から輝かしい高音部まで完全にコントロールしているこのひとが「注目を受けることはなかった」つーのはどういうこっちゃ! テクニカルなフレーズに気持ちがこめられていて、バップ的なソロとはいっせんを画す新たな表現であることがグサグサと伝わってくる。3曲目以降はルネ・マクリーンも参加しているが、サリヴァンのブリブリした演奏にはいささかのゆるぎもない。マクリーンはアルトとテナーを両刀使っているが、ぐいぐい行くリーダーに比べて思索的というかバップ的な演奏だが、すごく好ましい(個人的には低音部の心地よいテナーが好きですが、アルトもいい)。サリヴァンはカウント・ベイシーのリードトランぺッターだった、という表記があったので驚愕しまくり調べてみたがよくわからなかった。単にトランペットセクションのひとりとして参加していたのとリードだったというのは大違いですからね。傑作というか時代的なものを考えると歴史的名盤(いい言葉ではないかもしれない)と言うべきだと思うが、あまりそういう評価はないようで、とても残念。はっきり言って傑作です!それにしても「新主流派」という言葉を使いたくないのだが、なにかよい表現はないですかね。