junko sumi

「ぎんぎんぎらぎら」(DIW RECORDS DIW−943)
JUNKO SINGS JAPANESE NURSERY RHYMES

「雨ふり」「荒城の月」「浜辺の歌」「鞠と殿様」「冬の夜」「花」「月の砂漠」「小さい秋見つけた」「おさるのかごや」「夕日」……と収録曲を並べると、「ああ、なるほど、そういうやつね」としたり顔でいうやつがいるかもしれないが、このアルバムは、「童謡をじょうずにジャズにアレンジして歌いました」というようなもんではない。まあ、たしかに一曲目の「雨雨ふれふれ……」とかがばっちりブルース進行になっているのを聴くと、そうかなるほど雨雨ふれふれはブルースなのだなあとその着眼点に感心したりするのだが、実はそんな「なになにをジャズにしてみました」的レベルをはるかにこえた、すばらしいアルバムなのだ。それはたとえばコルトレーンが、サウンド・オブ・ミュージックのかわゆい挿入歌にすぎなかった「私の好きなもの」を「マイ・フェイヴァリット・シングス」としてまるっきりちがった次元のものに再構築してしまったのと同様に、澄淳子とそのメンバーは、童謡をばらばらに解体して、まったく別の、凄まじい、奥深い、魅力あふれるものに作りあげている。そして……ここが重要なところだが、一見、まったくちがったものに生まれ変わらされたチューンの根底には、コルトレーンとはちがって、「童謡」がはっきり露骨に横たわっている。それが澄淳子というシンガーの凄さだと思う。どの曲も、打ちのめされるぐらいに感心した。もともと塩谷さんが入っているという理由だけで購入したこのアルバムだが、あまりによいので、すっかり澄淳子というシンガーのファンになり、いろいろ買ってしまいました。こんなすごい歌い手が日本にもいるのだ。すっかり好きになってしまった。共演者もみな立派。塩谷さんのソプラノは、ボーカルと同じぐらい心に染みる。名盤じゃ。

「恋のバカンス」(NIPPON CROWN CRCJ−9149)
JUNKO SUMI & STONE ALLIANCE

 童謡をモチーフにした近作「ぎんぎんぎらぎら」があまりによかったので、続けざまに澄淳子のリーダー作を買って聞いてみた。この「恋のバカンス」というのは二枚目で、なんとあのストーン・アラアインスをバックバンドにしてボーカルを聞かせる。ええっ、じゃあグロスマンが歌伴のバックでぎょえええっと吹きまくるのか……と早合点したのは誰? 私です。でも、ちがった。サックスはおらず、かわりにギターが入ってるのだった。なーんだ。いわゆるオールディーズをジャズっぽく歌ったもので、タイトルチューンの「恋のバカンス」はザ・ピーナツのヒット曲。ほかにも、「恋の片道切符」とかいろいろ。一曲一曲聴くとすごく雰囲気もいいし、かっこいい。さーすがストーン・アライアンスと思える曲もあるのだが、どの曲もアプローチが似ているためか、ずーっと聴いていると飽きてしまうところもあるし、完全にバイショウというか、「歌伴」になってしまっているトラックもあり、ここにグロスマンがいたらなあ……ってちがいますか? でも、澄淳子はやっぱりよい。