「TENELEVEN」(DOUBTMUSIC DMF−144)
TENELEVEN
たとえばプログレとかロックとかこういう演奏についてなにかを述べるような知識もなーんもないのだが、なにしろ聴いた順番で書いていくというシステムなので、無知をさらけだすことになるかもしれないが書かねばならんのです。1〜3曲めは静かで、音のダイナミクスをしっかり聴き取らないとおもしろくないタイプの演奏で、ここでぐーーっと引き込まれる。一音も聞き逃さないように真剣に聴くことになる。冒頭に派手な曲調を持ってくるのが普通かもしれないが、その逆。ドラマがここからはじまるようなざわざわした感じがある。そして4曲目が、めちゃめちゃかっこいいのです。この呪詛のようなヴォイスには、聴いても聴いても聴いても聴いてもまた聴きたくなる麻薬のような効果がある。いや、今もまたこうして聴いているわけですが。こういう音楽についてはほんとうに無知で、私がこういうものを聴くのはドラムの山本達久とか中村達也というひとが参加しているアルバムによってのみだと思うが、本作は両人とも参加している。5曲目はその両者の激しいドラムバトルで幕をあける(バトルといっても、パワフルではあるが、完璧な技術に裏打ちされた会話のようで、呆れるほどすごい)。このあたりになると最初の1〜3曲目の静けさがなんだったんだと思うような強烈な激しさで、あれよあれよと連れて行かれるばかり。ボーカルが入り、シンバルによるオーケストレイションのような世界になり、オペラのような美しくも力強い「声」が全面に出た演奏が展開する。6曲目は、ちょっとどきどきしたときの人間の鼓動のようなビートがテンションを張りつめさせ、それがみるみるひとつのストーリーになり、ひたすら口をあけて、アホのように聞き入ってしまう。さっきも書いたが、このバンドはどの曲も、というかアルバム全体の流れも、ひとつのドラマティックなベクトルがあって、心地いい。7曲目は、基本は4音の反復にすぎないのだが、それが次第に力を持ちはじめ、宇宙のすべてを巻き込んで、実際のテンポは変わらないのにどんどんどんどんスピードが早く速く疾くなっていくように聞こえてきて、ついには膨大なエネルギーを発する銀河系レベルの大回転へと巨大化していくようなポテンシャルの演奏で、こうしてこうしてここでこういう音を重ねてここでこの楽器が入って……だからこうなってるのだ、というような分析を超えた原始的な力と最先端のかっこよさが同居していて、ちょっとうるっとくる。8曲目はキーボードによる凄まじいイントロではじまり、そのあとのちょっとしたリフが延々と発展していく曲。とにかくこのリフを捨てない、というか、ずーっと守っている。そのしつこさは感動ものだ。かっこええわん。全体を通してひとつの組曲として聴けるが、やっぱり4曲目をリピートしてしまうなり。やっぱり4曲目がいちばん癖になるなあ。もっかい聴こ。だれのリーダー作というわけでもなさそうなので、バンド名で項目を立てました。