kenneth terroade

「LOVE REJOISE」(BYG/SOLID ULTRA−VIBE CDSOL−3891)
KENNETH TERROADE

 その昔、学生のころ、輸入盤屋でやたらとBYGのカットアウトが安く売っており、ジャケットもべこべこのチープな感じだったが、聴きたいものは買って聴いた。そんななかで、これはなぜか聴かなかったなあ。まったく知らない奏者だったので恐れをなしたのだろうか。それとも単に金がなかったのか。今回再発にあたっておそるおそる聴いてみると、いやー、なかなかかっこいいではありませんか。とくに主役のターロードのフリーキーなブロウとピアノのフランソワ・テュスクのめちゃくちゃな煽り、ドラムのクロード・デルクローのドシャメシャなぶっ叩きはかっこいい。正直、これを学生のころに聴いていたら、けっこうがっかりしたかもしれない。当時はこういうコレクティヴインプロヴィゼーションというのか、全員でせーのでぐちゃぐちゃにやりましょう、みたいなのがあまり好きではなかったし、オーディオの解像度もいまいちだったので団子みたいに音が固まって聞こえるのだ。デルクローのドラムも今の耳で聴くと、うーん、全然いいですね。ターロード以外にリード楽器がふたりいるのだが、混沌としていて聞き分けられない。でも、それでいいのでは。途中で、妙にメロディのあるテーマが入り、そのあとはカオスになっていくのだが、ある種の「俺たちはなにをやってるのだろう」みたいな、当人たちも理解せずに突き進んでいる熱情というか、パワーがあるように思う。このただ事ではない、狂気のパワーを受け止めるだけでも本作を聴く価値があると思う。二曲目はビートのない、この時代のこういう演奏の典型ともいえそうなドロドロした演奏だが、正直、音もいいし(ミックスし直しのせい?)、まるでストレスを感じず、楽しく聴くことができる。かなり繊細な(即興的な)反応や展開も各所にあり、とても私好みの演奏だった。ツインベースも二曲目の最後のからみなど、なかなかいい感じである。現在も「宗教活動」を行っている、と原田和典さんのライナーにはあるが、「音楽活動」の方はどうなのだろうか。興味深い。