「(V)IVRE」(LABEL BLEU LBLC6668)
HENRI TEXIER STRADA SEXTET
もう、興奮、興奮、興奮のるつぼ。あまりにかっこいいので、コーナーポケットに持ち込んでかけてもらおうとしたのだが、ほかの客がいたので断念した。マスターはその数日後に亡くなったので、結局、聴いてもらえなかったアルバムである。とにかくもうめちゃめちゃすごい。これはもしかしたら、私にとって現代ジャズの理想形かも……と思えるほど、ほぼ完璧な演奏である。どんな演奏であるか、と質問されると、言葉でこたえるのはむずかしいのだが、「まあ、なんというか、伊福部昭みたいな曲かなあ」……。わからん? そうだろうね。とりあえず聴いてみてほしい。そしたらわかるから。どの曲も、作曲とソロが不可分で、両方とも最高であり、テキシェの息子はもちろん、もうひとりのよく知らんバリサク(たぶん、すごく有名なのだろうな)もすごい。トロンボーンもものすごいし、ギターもかっこいい。全員がリーダーの意図をちゃんと汲んだうえで、それぞれの個性をこれでもかというほど出しまくっており、しかも、全員、楽器の扱いは完璧である。ヨーロッパジャズはなあ、とか言ってるひとは、これを聴いてから言ってほしい。ジャズとか、クラシックとか、ロックとか、そういうジャンルをこえて、すべての音楽ファンに聴いてほしい傑作です。
「L’INTEGRALE」(SPHINX−DISTRIBUTION JMS108−2)
HENRI TEXIER
アンリ・テキシェの「AMIR」「VARECH」「A CORDES ET A CRIS」という1975年から79年にかけてのソロアルバム3枚をカップリングしたものらしい(合ってますか?)。1枚目と2枚目は多重録音によるたぶん完全ソロで、コントラバス、エレベ、フルート、ウード、ピアノ、パーカッションなどをひとりで駆使しての演奏。3枚目はそれに加えて、曲によってアルド・ロマーノやゴードン・ベックなどがゲスト的に参加しているらしい(合ってますか?) なにしろ情報が少ないうえ、フランス語なのでよくわからんのだ。でも、内容は超おすすめ。私は完全にはまりました。「ダーダーダー……ヤーヤーヤー……」的なボーカル(ヴォイス?)やフォークソング的な曲調など時代を感じさせるのだが、とにかく全曲「いかにも」といった感じのキャッチーさのあるものばかりで、聴いていて楽しい。素朴で覚えやすく民族音楽的なメロディー、わかりやすいリズム、反復の多用、ロックやジャズだけでなく、津軽三味線やブラジルのポップス、インド、アフリカ、アラブなどを思わせるようなシンプルな素材……クラブシーンとかで流行りそうである(もしかしたらそうなのか?)。ここからたとえばドン・チェリーやミルトン・ナシメントなどを連想することも可能である。CD二枚、25曲を一気に聴くと、さすがに良く似た感じのものもあるが、シャッフルしながら何曲かずつ聴いたりしていけば、毎日でも飽きないと思う。