「SUNSHINE SUNSHINE OR GREEN AS GRASS」(ILK MUSIC ILK184CD)
SIMON TOLDAM
アクセル・ドナーのライヴ時に購入。そのライヴのときはかなり変態的というかアヴァンギャルドなアプローチもまじえた凄い演奏ですっかり感心してしまったのだが、リーダー作である本作においては、びっくりするほど「ジャズ」だった。ヒアノトリオで美しい和声を非常に抑制された表現でつづっていく(全曲オリジナルであり、どの曲も珠玉のかっこよさ)。しかも、かなり書かれた部分があるように思われるが、全体に自由な雰囲気はずっとキープされている。これはモダンジャズ的なピアノトリオのフォーマットを使い、モダンジャズ的な調性のなかで、どれだけやりたいことができるか、という挑戦なのではないか。コペンハーゲンにある「カインド・オブ・ブルー」という店でのライヴで、1曲目など、冒頭の静かな部分でも話し声やいろいろな雑音が入っている。しかし、それが邪魔にならず、逆にええ感じになっている、というのも昔のジャズっぽい。スウィング感のある曲も多く、客も普通に楽しんでいる感じがある。そして、この緊密なコラボレーションというかインタープレイが、またジャズっぽいのである。ジャズっぽい、という言葉を否定的に使ったり、揶揄しているわけではなく、本作は「ジャズ」なのだ。かなり骨太の。どの曲にも(テーマも即興部分も)過激な表現が頻出するのだが、それらもすべて極めて慎重にコントロールされていてリーダーの考える「美」に奉仕しているところがめちゃくちゃかっこいい。ベースもドラムもかなりぎりぎりまで表現の幅を広げていて、しかもすばらしく上手い。このフォーマットのなかでいろんなことを試しているのだと思う。傑作。