kasper tranberg

「LIGHT」(ILK MUSIC ILKCD203)
THE UNIVERSAL QUARTET

 芳垣〜トランバーグ〜メルバイの物販で購入。(たぶん)トランバーグがリーダーの「ユニバーサル・カルテット」の(たぶん)二枚目(曖昧な情報ですんません)。本作録音時は2009年(出たのは2013年)なので、当時89歳だったわけだが、いやー、これは凄いわ。アーマッド・ジャマルグループに客演したやつよりもずっと凄い。このバンド、2管編成だが、残りのふたりがドラムとベースではない。ベーシストはおらず、かわりに各種パーカッションやら民族楽器やらキーボードやらボーカルやらをするひとが入っていて(基本的にはピアノか?)、最初からまともなジャズをやろうというつもりはないらしいが、ちょこっとトランバーグさんとしゃべったとき「ユーゼフ・ラティーフは私の先生だよ」と言っていた。つまり、師事していたわけでこのバンドは自分の師匠を迎えたグループなのである。フリーインプロヴィゼイションの曲もある。それにしてもなんという凄いミュージシャンなのだろう、ラティーフは。89歳にしてこの前進意欲。昔の名前で出ています的な考えは微塵もなく、孫、いや曾孫ぐらいの若い連中に混じっても、一緒になって新しいものを造り出そうとする強固な意志。ミュージシャンかくあるべしというその思いをまざまざと見せつけられる。このアルバムを聴いて奮い立たないものはいないだろう。俺なんかまだまだ若手だよな、と(ミュージシャンに限らず)みんな思うのではないか。基本的にはジャズをベースにしているが、民俗音楽的なサウンドになっている……と書くとあんな感じかなこんな感じかなと思うかもしれないが、とにかくそれ以上に「ユーゼフ・ラティーフ色」が全体にべったり塗られていて、しかもほかの3人もかなり色濃い自分の色を持っていて、いやー、よくこんな4人集めたなあと感心した。エスニックな、ディープなリズムの持つドライヴ感というかグルーヴは、それを聴いているだけで心地よいが、そこに加えられる即興的でわけのわからん「音」の数々(もう、音というしかない。なんだかわからない楽器の音色であり、音程もないようなサウンドだったり、シンセだったり、声だったり、言葉だったり、意外にちゃとしたメロディだったり、歌だったり……もう無限)がまさに「ユニバーサル」というしかない世界を構築する。そして、ラティーフに捧げられた「ブラザー・ユーゼフ」という曲での89歳のフルートはものすごくしっかりしていて驚異。なんでもちゃんと面白がれるひとへのすばらしい贈り物。傑作。