misha tsiganov

「SLAVONIC ROOTS」(ARTBEAT CLUB EDITION AB−CD−09−2015−097)
MISHA TSIGANOV

 ミーシャ・チガノフ(と読むのか?)というピアニストが、セクステットとともに吹き込んだアルバム(曲によってはハーモニカが入ってセプテットになる)だが、タイトルで露骨に示されているとおり、スラヴの音楽(ロシア民謡5曲、ブルガリア民謡1曲、ウクライナ民謡2曲、ベラルーシェ民謡1曲、オリジナル1曲(ロシアのゴスペル」というタイトル))をジャズにアレンジしたもの。民謡とかフォークミュージックというのは、モードジャズと親和性があるようで、本作も70年代的なブラックジャズを思わせる、かなりハードでヘヴィな演奏ばかり。つまり私の好みにどストレートということだ。ゆったりしたワンコードのグルーヴと硬質なソロの応酬とそれをあおるリズムセクション、適度なアンサンブル……といったものはめちゃくちゃかっこいいし、愉しい。テナーのドニー・マッカスリン以外知らない人たちだが(もちろんマッカスリン目当てで買ったのだ)、アメリカ録音であり、ほとんどがスラヴ系の名前であるところをみると、アメリカ在住のそういうミュージシャンたちということか? トランペットも超絶的にうまいし、ヴィブラホンがものすごーくええ味出しているし、3曲だけ入っているハーニモカが大正解の演奏(いかにもフォークミュージックという感じの、しかも超うまい演奏でしびれまくる)をしているが、個人的にはやはりマッカスリンはどうなんや? というところが気になる。そして、はいはい、もちろんマッカスリンは凄かったです。アルバムコンセプトから全編アコースティックで通しているが、柔らかい音色での変態的フレーズは健在で、いやー、しびれますなー(2曲目のソロなど、ブレッカー的なものとド変態なフレーズが混然となっていて美味しすぎる)。ドラムもええ感じだし、リーダーのローズやシンセもとても溶け込んでいる。これはめちゃめちゃ傑作だと思います。