「UKON AT EASE」(ART UNION RECORDS ART CD−102)
SHIGERU UKON
誰に近いか、と言われれば、やっぱりズート・シムスかなあ(タイトルもタイトルだし)……と思って、一曲めから順番に聴いていくと、最初はゲッツばりに音が細くて軽やかなのだが、半分ぐらい聴いたあたりから、ベン・ウエブスター(というかスコット・ハミルトン)的に低音が重くなり、最後の数曲はイリノイ・ジャケー的にダーティートーンを使い、音も野太い感じ。スウィングテナーの歴史の総決算、という気もするし、何でもできるけどそれってどうよ、という気もする。なにしろ生で聴いたことがないのでなんともいえないが、とにかく歌心に重点をおくタイプであることはまちがいない。もう少し個性があればいうことはないが、選曲もすばらしいし(「スプリング・キャン・リアリィ・ハング・ユー・アップ・ザ・モスト」とか「トゥー・スリーピー・ピープル」とか「ドウ・ユー・ノウ・ファット・イット・ミーンズ・トゥ・ミス・ニュー・オリンズ」とか「エンジェル・アイズ」とか……とにかく私の好きなスタンダードを選んで演ってくれてるのか、と思いたくなるほど、私好みの曲が並んでおり、その解釈も堂にいっており、小粋なアレンジも嫌みじゃないし、共演者も花マルである。何度も聴ける、私にとっては癒し系のアルバム。唯一、これは一曲めからずーっと気になったことだが、ロングトーンのときに音を持ち上げる癖があるらしく、本人は効果のつもりなのかもしれないが、どうもそこだけがなあ……。じつは私もそうなのですが。