「LIVE AT LAZY BIRD」(AKETA’S DISK MHACD−2627)
JUN USUBA
ピアノレストリオでライヴ。選曲はスタンダードばかり。演奏は、聴いたひとはたぶんみんなそう思うだろうが、ロリンズ的である(ほんとうはミュージシャンやアルバムについて語るときに、誰それに似てるとか誰それの影響がある云々は失礼だとは思うのだが、なにしろ本人がライナーノートで「僕は一年間、ソニー・ロリンズを毎日聴き返した」と書いているのだからまあいいでしょう)。選曲的にもいかにもロリンズ好みの歌物とか小唄が多くて(「アナザー・ユー」とか「サニー・ムーン・フォー・トゥー」など、まさにロリンズというべき曲もやっている)、あとバップチューンやブルースもあるし、ほんとにこのひと、ロリンズが好きなんだろうなあと思う(「アンティ・カリプソ」はちょっと異質だが)。という風に、内容はすっごくいいんだけど、最初はあまりにロリンズに似すぎている気がした(ノリはちょっとちがうんですが)。しかし、何度か聴いていると、いやいや、そんなことはない。コルトレーン派というのが無数にいるのに、ロリンズ的にここまでバップ的な即興ができるひとはまれである、という気持ちになった。それぐらいうまいし、音楽的にも深い。だが、テナーをやっているひとならわかるだろうが、こういう風に吹くのはめちゃめちゃむずかしい。ロリンズのいちばん凄いころの演奏との共通点があるのだ。音のぶっきらぼうな出し方、そのあとの歌い方、完璧なアーティキュレイション、高音部と低音部の音質のちがいをうまく使ったフレージング……前衛性もあり、歌心もあり、もちろんバックアップするベースとドラムもめちゃうまくて、このトリオは本当に心地よい。豪快さと繊細さが同居するこのアンバランスで、なおかつかっこいい音楽……これこそジャズではないか。バラードも最高で、愛聴盤になると思います。