「NANA=ANGELO NELSON=NOVELLI/AFRICADEUS」(CORE PORT RPOP−10014)
NANA VASCONCELOS
最近はミュージシャンの訃報が多いが、なかでもショックだったのはナナ・ヴァスコンセロスが亡くなったことだ。ナナはひとつのジャンルにとどまらず音楽の世界の壁をぶっ壊したひとで、ブラジル音楽に根っこをすえながらも、フュージョン、ロック、ポップス、ジャズ、即興……さまざまな音楽に強烈なリズムを付け加えてくれたが、自分のリーダー作となると、超個性的で民族音楽的色彩の強いすばらしいミュージシャンであることをつねに証明し続けてきた。パーカッションってすばらしいなあ、と聞いたものみんなが思うような音楽性の持ち主だった。このアルバムは初期の「ナナ−ネルソン−アンジェラ−ノヴェリ」と「アフリカデウス」という二枚のアルバムをカップリングしたお得盤。前者はギターが中心となったカラフルなサウンドで、エンドレスで流していたくなるような中毒性がある。後者はナナのビリンバウ(とボーカルとパーカッション)のみによるソロで、こちらのほうがインパクトは強く、ナナというミュージシャンを聴き手に認識させるだけの迫力がある。後者のほうが録音が早く、ナナの初リーダーアルバムであるが、この時点で個性が完璧に確立されていることに驚く。私が、ビリンバウという楽器をはじめて聞いたのは、高校生のときに「LA4」というローリンド・アルメイダとかがやってたグループの「ビリンバウ・キャリオカ」という曲を耳にしたときのことで、今から考えるとけっこうどさくさだったかもしれないが、ビリンバウのびょんびょんいう音色がすごく印象に残った。のちにガトー・バルビエリのライヴに行ったときにパーカッションの有名ななんとかいうひと(すんません忘れました)がビリンバウを使ってて、めっちゃ興奮したが、考えてみるとガトーのバンドでナナはビリンバウを弾いていたわけで、ちょっとしためぐり合わせてある(私にとって)。このアルバムやナナの音楽について、私はたとえばミルトン・ナシメント(めちゃくちゃ好き)の音楽について語るのと同様程度の少ない言葉しか持っていないが、単に癒されるというだけでなく、大河の水のように流れてはまた消え去ることを永遠に続けていくような圧倒的な「大きさ」と「楽しさ」に満ちた音楽だと思います。なお、ボーナストラックが2曲ついている。