cedar walton

「FIRST SET」(STEEPLE CHASE SCS−1085)

「SECOND SET」(STEEPLE CHASE SCS1113)

「THIRD SET」(STEEPLE CHASE SCS1179)
CEDAR WALTON QUARTET

 マイルスグループなどにも匹敵する黄金期のシダー・ウォルトン・カルテット珠玉の、77年、コペンハーゲンの有名な「モンマルトル」でのライヴ3枚。もう、心の底からめちゃめちゃ好きな、惚れ込んでいるアルバム。ライヴなので同時期のスタジオ作にくらべ、よりいきいきした演奏にはなっているが、その安定感も昂揚感も細かな表現力もすべて完璧で、荒さ、雑さは微塵もなく、ただただすべてが良い方向に向かっている。学生時代、なにげなく「サード・セット」を購入してそのあまりのすばらしさに陶然として聴きまくり、その後、「ファースト・セット」「セカンド・セット」も入手し、3枚とも超のつく愛聴盤となった。なんといってもボブ・バーグがすばらしすぎる。バップナンバーでもモーダルな曲でもオリジナルでもバラードでも完璧にこなす。このメンバーはあの傑作「イースタン・リベリオン2」と同じで、私は先にそちらを聴いていたが(学生サックス吹きはみんな聴いていた。あと「ニュー・バース」とかも。リーブマンやグロスマンは圧倒的すぎて手が届かない存在だったが、ボブ・バーグはもう少し身近だった)、やはり今でもこちらのライヴのほうに手を伸ばしてしまう。迫力が、ノリが、すごいのだ。ボブ・バーグの凄さは、まず、高音部から低音部までまったくかわらないソノリティ(ちょっと濁ったような、一度聴いたら忘れられない音色だ)、そして、フレーズの豊富さ、アイデアの豊かさ、スケールを吹くときの粒だった、均等な指使い、リズムの強烈さ、それらをつなぎあわせて放出するすさまじいテクニック……など枚挙にいとまがないが、リーブマンのようなアブストラクトで高尚な表現でもなく、グロスマンのようにアクが強く、共演者を置いてきぼりにして吹きまくる、ということもなく、リーダーの求める音楽性をきっちり守りながらも、しかし、自分をぎりぎりまで表現する、という、芸術性と職人芸的なところが融合しているところに魅せられるのだ(このライヴの時点で若干25才! 驚愕!)。その後、マイルス・バンドに入ったあたりから、音色も変わり、演奏もブレッカー的なものに変貌していくが、そういう意味でもこの時期のボブ・バーグの最高の演奏が詰まったこの3枚は貴重なのだ。もちろんボブ・バーグの前任者であるジョージ・コールマンやクリフォード・ジョーダンが入ったシダー・ウォルトン・カルテットも大好きだし、ほかの管楽器が加わって2管になったものも嫌いではないが、やはりなんといってもこのライヴのメンツこそが最高でしょう! まず、「ファースト・セット」だが、A面1曲目はモンクの「オフ・マイナー」をジャズロック風にアレンジしたもの。すごいなあと思うのは、このカルテットが単なる四人でオリジナルやスタンダードをやりました的なグループではなく、スタンダードも有名なモダンジャズの曲もそしてもちろんオリジナルも、全部しっかりとした(しかも必要最小限度の)アレンジがほどこされていることで、ワンホーンという枠組みのなかでボブ・バーグは自由自在にブロウしているようだが、じつはピシッと締めるところは締めていて小気味いい。オーバートーンを使ったシンプルなフレーズは、あのころみんなが真似した。シダー・ウォルトンもモンクマナーを一切使わず、モダンでモーダルなアプローチに徹している。しかも歌心爆発。そして、サム・ジョーンズのベースのバッキングのすごさよ。というわけで、一曲目からエンジン全開、一体感丸出しの最高の演奏なのであった。二曲目「フォー・オール・ウィ・ノウ」はスタンダードのバラード。ボブ・バーグの無伴奏ソロからはじまるこの演奏も、25歳とは思えないバーグの朗々たる歌いあげが聴けるし、もちろんシダー・ウォルトンのソロは絶妙(バッキングも)だが、それを挟んでふたたび登場するバーグのソロがまた圧巻。カデンツァも見事。B面はシダーのオリジナルが3曲続く。B面1曲目はあの有名な「ホーリー・ランド」だ。賛美歌を連想させるピアノの独奏から、あのもの悲しいテーマがはじまり、ふたたびピアノの無伴奏ソロ……という、おなじみのテーマ提示のすばらしさは筆舌につくしがたい。そのあと、ソロとベース、ソロとドラムといったチェイスがくり返されるような複雑な構成になるのだが、このあたりのジャズ的なスリルというか至芸はほとんど陶然・呆然・唖然とするばかりだ。名作であり名演である。B−2はこれもおなじみだろう、シダー・ウォルトンのオリジナル「アイム・ノット・ソー・シュア」。ジャズロック的なリズムの使ったかっちょええテーマ。ボブ・バーグのシンプルなアイデアの、思い切ったブロウ。そして、シダー・ウォルトンのすばらしいソロ。ノリノリとはこのことです。シダーはおそらく、ちょうど4ビートからこういったリズムへの変化を体感したひとで、じつにどんなタイプのリズムにでも対応する。ええ曲も書くしアレンジもいいし、巨人のひとりだと思う。B−3は、これまた名曲! ほんま、シダー・ウォルトンは最高のコンポーザーだと思う。ちょっと聴くとモード風だが、ちゃんと美しい進行のあるすばらしい曲である。まずはシダー・ウォルトンのソロが先発で、そのあとテーマに戻ってからのボブ・バーグのソロが爆発しまくり。すごいぞ! ああ、こういう風に吹きたかったなあ。もちろん無理なのだが、あのころは真剣にそう思って練習しておりました。つづく「セカンド・セット」は、コルトレーンのあの「ブルー・トレイン」ではじまる。コルトレーンのとか言っても、ようするにただのブルースじゃねえかと思ったひとは聴いてみてほしい。きっちりしたかっこいいアレンジがほどこされ、全編にわたってモードジャズ風のリズムパターンが持続し、随所にリフが挿入され、そのすべてが「コルトレーンのあの『ブルー・トレイン』」と言ってしまっていい状態になっている。ボブ・バーグがダブルタイムで吹きまくるソロのすごさと言ったら絶句もの。2曲目は「アイ・ディドント・ノウ・ファット・タイム・イット・ワズ」。サラ・ボーンのパブロ盤でも有名なこの曲、めちゃめちゃ好きなのである。3枚のなかでもっとも普通にバラードをやった、という感じの演奏だが、ボブ・バーグの吹きまくるソロの歌心はほんとうに感動もの。ひとつのフレーズを半音ずつずらしていくこのやりかたは同じフレーズをブレッカーも吹いているが、こういう露骨な形で最後まで吹ききるのは若いボブ・バーグならではで、これも学生時代に流行った。サム・ジョーンズのベースソロもすばらしい。B−1は(というか短い「テーマ」をのぞくとB面いっぱいを占める)シダー・ウォルトンのオリジナルで大作「日曜日組曲」だ。これはまさに「組曲」といっていい作品で、ちがった構造、ちがったイメージを持ついくつかの曲(4つの異なった場面があり、それをつなぐちょっとしたブリッジ的な部分がある、という感じ? ただし、4曲目は1曲目と同じ)を並べていて、これがコンサートホールではなく「カフェ・モンマルトル」のそれほど多くないであろう客のまえで演奏されたとはなあ、と感慨にふける。聴きとおすと20分もある、ずっしりした手応えのある名演であるが、それもシダー・ウォルトンの作曲力、アレンジ力、音楽性にくわえ、この凄腕カルテットの実力のたまものでありますね。とくに3曲目(?)の超アップテンポのモーダルな曲でみせるボブ・バーグのブロウは技術的にもすごすぎて、口をあんぐりあけるしかない。そしてついに3枚目「サード・セット」だが、どれもすごいけどやっぱりこの3枚目をいちばん愛していると思う。とくにB面の3曲は、聴くたびに昇天する名演ぞろい。まずはA面1曲目のビリー・ヒギンズの曲「エンジェル・オブ・ザ・ナイト」(クリフォード・ジョーダンも演ってる)。ドラマーの作曲? などと思うひとは故古澤良治郎のことを思い出すように。ドラマーですぐれた作曲家でもあるひとは山のようにいる。この曲はバラードだが、アルバムをバラードで開幕するとは大胆な、と思っているとリズムが倍になって、それがずっとキープされる。シダー・ウォルトンとボブ・バーグのソロはこのリズムで演奏され、とくにゴリゴリしたバーグのソロはバラードというよりはけっこうえぐいミディアムな曲という印象。サム・ジョーンズのベースソロでふたたびバラードに回帰し、そしてベースの弓弾きとピアノの装飾が美しいテーマに戻る。2曲目はシダー・ウォルトンのオリジナルのなかでも超有名な傑作「ボリヴィア」。たぶん、この曲を知らないシダー・ウォルトンファンはいないだろう。いやー、めちゃめちゃかっこいいですなー。ボブ・バーグのモーダルな迫力と歌心をあわせもった爆発的で流麗なソロ(コルトレーンの曲やマクリーンの「リトル・メロネー」などを引用している)は賛嘆に値する(もちろんモーダルな部分とビバップ的に進行する部分のある、そういう曲なのだが)。そして、ついに……ついに「サード・セット」のB面だ。3枚組のなかでこの面がいちばん好きです。いやー、どんだけ好きか語っていたら原稿用紙30枚ぐらいすぐ語れそう。正直なところ、この面だけスクラッチノイズがかなり聴こえるのだ。とにかくB−1の「ファンタジー・イン・D」が最高。最高すぎて聴くたびにめろめろになる。もともとはジャズ・メッセンジャーズの「ウゲツ」の表題曲なのだが、「ウゲツ」でも、ブレイキーは「次の曲のタイトルは『ウゲツ』で、ジャパニーズ・ファンタジーです」と紹介しているので、「ファンタジー・イン・D」というタイトルはおかしくないのだ。「イースタン・リベリオン2」でも同メンバーで演奏されているが、とにかくめちゃめちゃむずかしい曲を完璧にやりたおすシダー・ウォルトンとボブ・バーグ(ソロ冒頭のピックアップから、超ハイテンションで吹きまくってくれる。しかも歌心もすごい。若さにまかせた豪快なソロ、という意見もあるかもしれないが、いやー、かなり気配りの行き届いたすさまじいプレイだと思うよ)というふたりのソロイストには脱帽。1コーラスのなかにいろんな場面がある曲なので、そこをどう聴かせるかなのだが、さすがにこのふたりの引き出しの多さには参る。疾走しまくり、ドライヴしまくる。ジャズのかっこよさここに極まれりといった印象。個人的には3枚組全部を通して白眉といっていい、いや、いうしかない演奏。つづいて「ブルー・モンク」だが、このテーマのアレンジというかハモリがかっこいいんです。演奏自体はB−1の緊張にくらべてハードバップのくつろぎ、という感じで、これまた最高。シダーのソロもすばらしいが、ボブ・バーグのソロの冒頭の、ちょっとずつ変化をつけながら重ねていくフレージングなど、なんという成熟した演奏だと惚れぼれしてしまいます。「パターン・フォー・ジャズ」的なフレーズも聴けます。そのままラストの「リズマニング」になだれ込むというモンクメドレーだが、このテーマ部分のアレンジもかっこいいんだよなー。アップテンポでのボブ・バーグのあきれかえるほど流暢で迫力があってドライブしまくるハードバップ的ソロの真髄が聴けます。すごすぎる。延々と吹きまくったあげく「どやっ!」という感じでソロを負えるあたりが、またかっこいいんだよなあ。もちろん、つづくシダー・ウォルトンのユーモアたっぷりのソロもすばらしいし、そのあとのドラムソロ(ドラムが歌っているようなソロ)もほぼ完璧な出来ばえ。というわけで、久しぶりに3枚を連続して聴いたが、自分がいかにこのアルバムに影響されているか、を再確認しました。ほんとにすばらしい最高の3枚なので、聴いたことのないひとはぜひ聴いてほしい(「サード・セット」だけでも聴いてみて!)。あー、傑作じゃーっ。

「EASTERN REBELLION 2」(TIMELESS SJP106)
CEDAR WALTON・BOB BERG・SAM JONES・BILLY HIGGINS

 言わずと知れた歴史的大傑作。まさに奇跡的な一枚。めちゃめちゃ好き。以上、報告終わり! というわけにもいかんので、もう少し書くと、学生のころ、先輩方(とくにテナーの)がみんなこのアルバムを聴いていて、下宿だとかあちこちで聴かされるのだが、なんでみんな「2」だけ聴いてるんだろうと疑問に思っていた。のちに疑問は氷解。そうか、「1」はテナーがジョージ・コールマンなのだった。ジョージ・コールマンは悪くないけど、やはり「イースタン・リベリオン」といえばボブ・バーグなのだ。当時、登り竜のような勢いのあったこの天才的怪物テナーの真髄が収められているアルバムこそが、本作である。しかも、選曲も最高だった。全曲シダー・ウォルトンのオリジナルなのだが、いやー、シダー・ウォルトンってほんまにええ曲書くなあ。天才っすよ。アレンジも抜群。もちろんソロイストとしても一級。そのシダーのオリジナル曲ばかりを最高のメンバーでやりましょうというプロジェクトがこの「イースタン・リベリオン2」なのだろう(「1」は、シダーのあの傑作曲「ボリヴィア」を取り上げているが、ほかにジョージ・コールマンの曲やコルトレーンの「ネイマ」なども演奏している)。1曲目は、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズのアルバム「ウゲツ」でも演奏している「ファンタジー・イン・D」で、おそらくこちらが本来の姿なのだろうと思われるぐらい異常にかっこいい。ちょっと聴くと、明るくてめちゃめちゃハッピーな感じの曲だが、実際にやるとなると超難しいのだが、この曲をボブ・バーグは縦横に吹きまくる(あの傑作「サード・セット」でも取り上げられていて、そちらも必聴)。ボブ・バーグのソロというのは、低音から高音まで音質が一定していて、ちょっと濁った感じの音で、スケールやパターンをずらしていくような箇所のリズムやアーティキュレイションが粒だっていて、聴いていてめちゃめちゃ快感なのである。しかも、モーダルな新しいフレーズ、(おなじみの)オルタネイトフィンガリングを使ったフレーズなどとともに、バップの要素もしっかりとあって、おまけに歌心があるという怖いものなし状態なのだ。リーダー作「ニュー・バース」、サム・ジョーンズの「ヴィジテイション」などとともに、本作はボブ・バーグの最高の状態が聴ける、という点で人気は絶大だった。2曲目はボブ・バーグの抜けたピアノトリオでの演奏ではじまり、バップのピアノトリオの雰囲気で軽快に進むが、中盤にボブ・バーグが登場してブロウしはじめると一気にヒートアップする。そしてそのままエンディング。洒落てるなあ。3曲目がこれまためっちゃかっこいい曲なんでありまして、テーマを聴くだけで泣ける。ラテンリズムで、先発ソロはピアノだが、これがいいんだよねー。そしてボブ・バーグ。こういう曲にはボブ・バーグの「俺が俺が」的ソロがはまりまくる。名演ですなー。B面に行くと、B面いっぱいを使った「サンディー組曲」というのが演奏されるが、長尺で「組曲」かあ……と恐れをなす必要はない。たしかに「組曲」でいくつかの曲を組み合わせたような構成になっているが、どれもシダー・ウォルトンらしいすばらしい曲ばかりで、フツーにちゃんと聴けます。いつもA面ばっかり聴いてるが、たまにB面を聴くと、うーん、こっちもええなあ、と思ってしまう……というのも「2」あるあるだったりして。「3」はかなりたってから出た記憶があるが、ボブ・バーグは入ってるんだけど、カーティス・フラーの参加が個人的には邪魔で(フラーにはなんの恨みもないのだが、どうもボブ・バーグのシャープさが、フラーのもやっとしたトロンボーンのせいで薄らいでしまっているというか……)売ってしまったのです。最近は入手困難かもしれないが、聴いたことないひとはぜひ聴いてください。

「RELIVING THE MOMENT」(HIGHNOTE RECORDS HCD7265)
CEDAR WALTON FEATURING FREDDIE HUBBARD LIVE AT THE KEYSTONE CORNER

 たいへんな音源が出たなあと思ったが、世間的にはどうなのだろう。キーストン・コーナーで行われた、ローランド・カークに捧げるプログラムの一環としてのシダー・ウォルトンのレギュラーカルテットによる演奏であり、ゲストとして3曲にフレディ・ハバードが加わっている……というだけの音源であるが、私にとってはまさに「これですやん」という演奏なのだ。結局、いわゆる「ジャズ」という音楽では、こういう音がいちばん好きだ。わくわくする。ぐっとくる。とにかく、ボブ・バーグを擁した時期のシダー・ウォルトン・カルテットのライヴ音源というだけでわくわくなのに、そこにハバードが入ってるなんて……。ボブ・バーグがいたころのシダーカルテットのライヴというと例の「○○セット」3部作が名高いが、本作はサム・ジョーンズではなく、デヴィッド・ウィリアムズである。MCが終わったあと、ピアノのリズミカルなイントロだけで気持ちは高揚、ボブ・バーグのテナーがテーマを吹くだけでもすでにかっこいいのである。シダーのソロはリラックスとテンションが同居するような楽しくて、余裕も感じられ、テクニックもすごく、しかもかなりエグいというすばらしいもので、それにからむドラムとベースも最高である。この時点でこのライヴが凄いとわかったが、そのあと登場するボブ・バーグのソロの冒頭だけでもう参った。かーーーーーっこええ! これですよ。この音、このリズム、このアーティキュレイション、この歌い方……もう涙がちょちょぎれる。なんやねん、こんなん、ちょっとうまいテナーやったらこれぐらい吹けるやろ、というひともいるかもしれないが、いやいやいや、こうは吹けません。しかも、これこそが私にとって70年代ジャズの頂点なのであります。いやー、ええなあ。何遍聴いてもええ。そして2曲目は、シダー・ウォルトンの代名詞ともいうべき「ウゲツ」(ファンタジー・イン・D)で、この曲のテーマをハバードがフリューゲルで吹いているのを聴くと、メッセンジャーズのあの名盤「ウゲツ」を思い出して泣きそうになる。あのときのメンバーのうちふたりがここで再会しているわけだ。もちろんこの曲はシダーカルテットの持ちネタで、「イースタン・リベリオン2」や「サード・セット」でもやってるからボブ・バーグのソロが凄いのはあたりまえとして、ハバードのソロもよくコントロールされ、なおかつハバードらしいイケイケな感じもうまく出たハイレベルのもの。シダーのソロのときのヒギンズの繊細かつパワフルなバッキングも聴きもの。3曲目はこれも「ファースト・セット」でおなじみの「フォー・オール・ウィ・ノウ」で、ボブ・バーグのテーマ吹奏を聴くだけで涙が……あ、この表現はさっき使った。ボブ・バーグのソロはかなり出色のもので、高音から低音までをあますところなく使ったすばらしい演奏。ピアノソロを挟んでもう一度バーグ登場でソロの後半テーマに突入してエンディング。ほれぼれ〜。4曲目はハバードのおなじみのブルース「バードライク」で、この曲あたりからハバードの音がかなりでかく録音されていて、ちょっとバランス悪いかも。でも、十分の音質ですが。ハバードのソロはびゅんびゅん飛ばしまくっている感じだが、このひとはハイノートや早吹きなどが目立つが、じつはタンギングや八分音符の吹き方のリズムを変化させたりすることで表現を豊饒にしているので、このソロはそのあたりが味わえる。つづくバーグのソロはこれも必殺技出まくりの安定した過激さ。すごいとしか言いようがない。ピアノソロ、ドラムソロのあとテーマ。5曲目は「ヤコブの梯子」という、旧約ネタのタイトルがつけられたジャズロック的な曲。この曲でのボブ・バーグのソロはまさに鬼神が乗り移ったとした思えない凄まじいもので、その気迫、テンション、テクニック、アイデア、スピード感……なにをとっても最高である。4分30秒ぐらいのところの、上昇アルペジオの凄さにはもう卒倒するしかない。もし、このCDにこの曲1曲しか入ってなかったとしても私は満足しただろう。まあ、ぶっ飛ぶしかありまへん。そしてラストはハバードの入った「インプレッションズ」。ハバードってこの曲好きだよねー。まあ、ちょっとセッション的なノリではじまるのだが、先発ソロのハバードが、ハバードフレーズ出まくりのすばらしい演奏を展開する。これはなかなかすごいぞ。会心のソロ、というやつではないか。つづくバーグのソロがこれまためちゃくちゃいい。いやー、かっこええなあ。こちらもバーグフレーズ出まくりというやつで、このふたりのフロント、とにかく個性がきつい。バーグのソロの頂点でハバードがリフを吹いて煽りまくる。ひえーっ、かっこええ! もう死ぬ。メカニカルなフレーズと歌心が交錯するシダーのソロのあと、ハバード、ヒギンズ、バーグによる激烈な4バースになり、異常な盛り上がりのあとテーマ。エンディングも盛り上がる。というわけで、いやはや傑作であります。カークがらみの曲が1曲でも入ってたらもっとよかったかもなあ、いや、そんなことはないぞと思ったり。