「A COOL BLUE」(CRISS CROSS JAZZ CRISS1102CD)
TIM WARFIELD QUINTET
クリスクロスというレーベルイメージとか、いろいろあって、このひとのことは気になっていたにもかかわらず、聴いたことはなかった。今回、「ナイト・トレイン」を演奏しているこの盤をはじめて聴いてみたのだが……うわー、めっちゃええやん! これまで聴かなかったのを悔やむほど。太くたくましい、芯のある音といい、バップからモードまで研究したあとが見えるフレーズといい、アーティキュレイションといい、豪快さと繊細さが同居した吹きっぷりといい、選曲といい、申し分ない。現代のハードバッパーというような呼称が似合うのかもしれないが、ことはそう単純ではない。現代において4ビートジャズをテナーで演奏しようと思ったら、モードジャズ、フリージャズ、フュージョン、その他もろもろの音楽を自分なりに消化しつつ、おのれの演奏スタイルを確立し、それを貫かねばならないのだ。このテナーマンはそれができている希有な存在であるといえる。とにかく、なによりも聴いていて心地よい。こういうやつがおるねんなあ。
「GENTLE WARRIOR」(CRISS CROSS JAZZ CRISS1149CD)
TIM WARFIELD QUINTET
まえに聴いた同レーベルのハードバップ作品が非常に好ましかったので、本作も期待した。ワンホーンの曲もあるが、基本的にトランペットとの2管編成で、トランペットは曲によってニコラス・ペイトンとテレル・スタフォードのどちらかが参加している。一曲目がいきなりバラードという大胆な構成だが、これを是とするかどうかは聴き手の好みによってわかれるだろう。私には、前作のようなテナー本来の魅力を全開にした生きのいい演奏を期待していたので、ちょっと肩すかし。この曲を皮切りに、どっちかというと内省的・耽美的かつモードっぽい演奏が続き、あれ? こいつ、ハードバップのひとかと思ってたらちがうのか、と少々驚いた。もしかしたら前回私が聴いた作品のほうが異色作だったのかもしれない。で、4曲目のインプレッションズ風のモーダルなナンバーではじめて、ごりごりの演奏が聴ける。この曲はめちゃめちゃかっこいい。一曲目でもよかった。というか、全編こんな感じの演奏だったらさぞかし満足できたのに、と正直思いました。もっと全体にガーンと行きゃあええのに。でも、音もいいし、アーティキュレイションもいいし、思い切りもいいし、適度にワイルドでもあり、ドスもきいてるし……ティム・ワーフィールドが実力あるテナー吹きであるという考えはぐらつかなかったです。とはいえ、まあ、このひとのアルバムを買うのはこのぐらいにしとこか。