「THE BEST OF MUDDY WATERS」(CHESS PLP−801)
MUDDY WATERS
結局、マディも、空き10枚組ボックスまで買ったわりには、いまいちいまだにぴんと来ていないのだ。私は、やっぱり、単純で、キャッチーなものしかわからない、貧弱な耳しか持っていないのかなあ、と思うことは多い。そう、マディやロバート・ジョンソンがわからないときなんか、とくにそう思う。なんでわからんのやろなあ。ブルースのみならず、多くのロックミュージシャンが崇拝しているというボス、マディ。声質が普通だからか。そういえば私が好きなボーカリストは、ジャズではエディ・ジェファーソン、バブス・ゴンザレス、ブルースではハウリン・ウルフ、ビッグ・ジョー・ターナー、ワイノニー・ハリス、サン・ハウス、ライトニン・ホプキンス……とダミ声のひとが多いからなあ。結局、マディがわからないということはシカゴブルースがわからないということであって、シカゴブルースがわからないということは、ブルースがわからないということだと思う。ドラムの入っていない曲などは、シカゴブルースというよりカントリーブルースみたいに聴こえるが、こういう聴き方もわかっていない証拠かもしれない。……と、ことほどさように、ブルースというものは私の心をゆさぶり、かつ、悩ませる存在なのである。ニューポートだかのライヴ(「モジョ・ワーキン」をやってるやつ)はすごくわかりすいのだが、このアルバムが「世紀の大傑作」みたいに言われると、やはり正直に「わかりません」というしかない。日暮氏によるライナーには「ありきたりのLPを次々切り捨てていったとしても、最後に残る5枚のLPの1枚は間違いなくこのLPだろう」と断言しており、それは日暮氏が、という意味ではなく、全音楽ファンが、という普遍的な意味なので、私は「ブルースが好きですか」と言われると言葉を濁してしまうのである。でも、「ハニー・ビー」とか「フーチー・クーチー・マン」とかは、ええなあ、と思います。それと、ジャケット! これは凄いわ。