「CURVES」(ENJA RECORDS CDSOL−6604)
MITCH WATKINS
ミッチ・ワトキンスというギターは、じつは生で観ているらしい。ベニー・ウォレス・バンドで来日しているのだが、あんまり記憶にはない。それはともかく本作はなにしろボブ・バーグのワンホーンなので、そういう興味で購入したのだと思うが、とにかく1曲目の冒頭のめちゃくちゃかっこいいテーマだけですっかりまいってしまった。ワトキンスのコンポーザーとしての実力はもうわかった。で、全体の演奏だが、とにくかボブ・バーグがぶっちぎりですばらしい。もう、涎が垂れまくるぐらい美味しいプレイばかりで唖然とする。音の太さ、つや、適度な濁り具合、引き締まった低音に輝かしい高音、そしてリッチな中音域、スケールやアルペジオを吹いたときのアーティキュレイションのドライヴ感、なにより斬新か,個性的なフレージングなどなど、もうすばらしいの一言。この時期、ジャズアルバムに参加すると、フュージョンのあのひとが4ビートをやりました的な感じになり、リーダー作では逆に振れてかなりハードな音になっていたので、こういうセッティングのアルバムがちょうどよかったのかもしれない。レーベルもエンヤだし、曲は適度にポップだし、ドラムはデニス・チェンバースだし、いろいろと良い方向に作用しての結果がこのプレイになったのだ。で、肝心のリーダーのミッチ・ワトキンスだが、帯にあった「テキサス出身の荒くれギタリスト」「豪快なへヴィ級セッション」「ガッツあふれるギターがとにかく熱い」みたいな印象はほとんどなくて、ものすごくきっちりしているように思えた。理知的だし、「荒くれ」とか「豪快」みたいなのは数曲、これのことかな? というのはあったのだが、ほかの曲でのプレイは丁寧かつポップかつ技巧派……という印象で、とても好感が持てる。ギター好きやギターを弾くひとはまたちがった印象があるかも。ギターシンセも弾いている。9曲中7曲をオリジナルでかためた意欲作で、さっきも書いたがええ曲書くんだよねー。ボブ・バーグの最高の演奏も、このひとの曲あってのことだから、やはりミッチ・ワトキンスえらい! ということになるのです。傑作。