david watson

「SKIRL」(DISK UNION AVAN 077)
DAVID WATSON

 デヴィッド・ワトソンはギタリストとしてはこれまで聴いていたみたいだが(はっきりと名前は認識していなかった模様)、本作はなななんとバグパイプに徹している。バグパイプといえば、ルーファス・ハーレイやポール・ダンモールが有名で、とくに後者のバグパイプはめちゃくちゃ凄い(テナーなどと併用したアルバムはたくさん出ているし、バグパイプオンリーのアルバムもいくつかある)が、本作におけるデヴィッド・ワトソンのバグパイプは私のそういった先入観をぶち壊してくれた。このアルバムは凄い。まず一曲目の、バグパイプのドローンとそのうえに乗っかるきらきらしたサウンドのハーモニーからの、パーカッションの過激な(和太鼓集団みたいな)突入はめちゃくちゃかっこいい。2曲目はシンセっぽい感じの(たぶん)口琴とアナログシンセ的なバグパイプが激突する。3曲目はどう聴いても日本というか歌舞伎っぽい影響が感じられるリズムに笙・ひちりきのようにバグパイプが乗る幽玄の世界。これもええなあ。4曲目は、これはバグパイプ本来の姿なのか、北欧的な鮮烈なロングトーンとトリルが印象的な曲。5曲目は躍動するリズムとバグパイプの吹き伸ばしが対峙する曲。激しいリズムに対して、ロングトーンがちゃんと力強く機能していることがわかる。叩きまくるドラムを際立たしているようで、じつはバグパイプも強烈に自己主張している。かっこいいっす。6曲目はアコースティックな「わびさび」の世界か。7曲目はマーチングなドラムにからむバグパイプの凛とした演奏。レーザー光線のようなロングトーンがめちゃくちゃかっこいい世界を構築。8曲目は、ミニマルミュージックっぽいところもあり、吐息がからむような生々しいところもある曲。9曲目はパーカッションアンサンブルによる激しいリズムチャントにチベットの笛みたいな感じでバグパイプが狂う。すばらしい。10曲目はブラジル的にクイーカが活躍する曲だが、バグパイプは中東風のような中国風のようなエキゾチックな働きをする。変やろ、これ。ラストの11曲目はフリーなテイストの空気のなかでガムランのようなパーカッション類とシンセのような低音バグパイプがベーシックな雰囲気を作るなかで、バグパイプがメロディを奏でる。とにかく従来のバグパイプのイメージが一掃されると思われるハイセンスな演奏で、すっかり気に入った。強く推薦。