baby face willette

「FACE TO FACE」(BLUE NOTE RECORDS/TOSHIBA−EMI ST−84068)
’BABY FACE’WILLETTE

 オルガンのベイビー・フェイス・ウィレットにテナーのフレッド・ジャクソン、ギターのグラント・グリーン(!)、ドラムのベン・ディクソンという完璧な布陣。ジャズ的にはグラント・グリーンの参加が美味しいのかもしれないが、個人的にはフレッド・ジャクソンが肝。デルマークの「サックス・ブロワーズ・アンド・ホンカーズ」にも入っているテナーブロワーだが、ここでもホンカーというより、かなり臭いジャズ的な、ドスのきいたブロウを決めてくれている(ブルーノート的には「フーティン・アンド・トゥーティン」のひとである。あのアルバムのジャケットはなぜかアイラー(の「スピリッツ・リジョイス」を連想させる)。いわゆるソウルジャズというやつの典型でしょう。日本語ライナーは「硬質なトーンはデクスター・ゴードンを思わせる点も多い」と書いていて、もとの英文ライナーはジーン・アモンズの影響のもとにある、というようなことを書いてあるが、もっと古い、たとえばジャケーとかコブのようなブロウテナーの影響が顕著のように思えます。1曲目の軽快なテンポのブルースでのテナーソロなど、おなじみのフレーズを織り込みつつ吹きまくっていて、音楽性とノリがぴったりマッチしていて最高である。なんというか、「いつもこういうソロはライヴでやってるんだよねー」という自信がソロに表れている感じがする。主役のウィレットのソロが逆にちょっとぎくしゃくしたノリで、そこのところか味わいというか個性になっている(このひとは若くして亡くなったらしい(37歳)が、長生きしていたらスターになっていたかも)。グラント・グリーンの歌いまくるソロもすばらしい。フレッド・ジャクソンは2曲目のスローブルースでのソロなど、めちゃくちゃ美味しい、ちょっと変化球を挟みながら単調にならないように工夫をしつつ、ソウルフルなブロウに終始する。オルガンとギターも快調。でも、まあこの2曲目は「曲」というのもはばかられるようなリフである。3曲目はエキゾチックなテーマの曲(はミュージカルの曲らしい)。一発ものに近いツーファイヴのマイナー曲なので、本人のオルガンソロも最後の方は同じ音を延々鳴らしながら弾きまくるという荒業を繰り出し、ものすごい盛り上げで興奮する。B面に移り、1曲目は循環っぽい構成の曲で、フレッド・ジャクソンは水を得た魚のようにここぞとばかりどこかで聞いたことがあるような美味しいフレーズを繰り出しまくり、一言で言うと「手慣れた感じ」である。それは決して悪いことではない。ちゃんと感情がこもっているからだ。プロですなー。ウィレットもバリバリ弾きまくり、グラントグリーンもシンプルだが心をつかむようなフレーズ出まくりで、うわー、どうしたんや君たち! と言いたくなるような快演。2曲目はノリノリのマイナーブルースで先発ソロはウィレットのオルガン。なんというか、なめらか、というのとは逆の、カクカクと引っ掛かりながら歌をつむいでいく感じがなんともいえません。グラント・グリーンの武骨なソロもいかにも楽しんで弾いている気持ちが伝わってくる。「こんな感じでいいかな?」みたいな雰囲気。フレッド・ジャクソンのテナーは、冒頭、スウィングしなきゃ意味ないよを引用するのだが、じつはかなり硬派なソロでなかなかヘヴィな手応えである。ラストの3曲目はスウィングするテンポのブルースで、テーマもシンプルながらなかなかいいアレンジがほどこされている。グラント・グリーンのソロも硬質にガチガチと歌いまくっているし、ウィレットもグリーンと同質な感じの四角いノリでブルースを歌い上げる、という感じの演奏。めちゃくちゃかっこいい。ジャケットもばっちり決まっている。残念ながら、ウィレットの他のリーダー作はテナーが入っていないので、私の関心からは外れ、聴いたことがないのである。でも、本作はとても気にいっていて、ときどき聴きます。