「THE LESSER KEY OF SOLOMON−BAEL」(RELATIVE PITCH RPRSS033)
JAMISON WILLIAMS
ジャミソン・ウィリアムスがルクセンブルグのル・ソヴァージュ大聖堂というところで行なったバリトンサックスソロ。申し訳ないが全然聴いたことのないひとだったが、サックスソロとなるとただちに聴きたくなるので購入。教会での録音ということで適度な残響があってすばらしい。でも、たとえば洞窟とか下水道とかの録音のようにものすごいエコーがかかりまくり……みたいなことはない。冒頭のハーモニクスによるマルチフォニックスではじまり、循環呼吸、特殊タンギング、リードをきしませる奏法などなど特殊なテクニックのオンパレードだが、それが見事にうまく配置されていて(しかも自然に)ダレることはない。ときどき挟まれるノイジーな部分が大迫力で、緊張感が途切れない。メロディックな部分はほとんどないし、バリトンサックスのリアルなトーンもほとんど聞かれないのだが、それでこの50分一曲勝負の即興をやり遂げたのはすばらしい。ある意味、先日聴いた吉田隆一のソロアルバム(バリトンサックスだけではなくフルートなどもしているが)とは対極にある演奏だが、どちらも今(2024年)にリリースされる意義のある演奏だと思った(本藤美咲のソロアルバムも!)。
タイトルは「ソロモンの小さな鍵」のこと。ジャケットの真ん中にある「バエル」というのは裏ジャケットにおなじみの絵が載っている悪魔軍団の大物だが、そういう地獄の悪魔の名を関した演奏が大聖堂で行われたというのも面白いです。レーベルのインフォには「ルクセンブルクのル・ソヴァージュ大聖堂で録音されたバリトン サックスのソロ。この地名は、生肉しか食べず、二列の歯を持ち、岩だらけの岬の下に住んでいたが、地滑りで埋もれたという野生の女性の伝説に由来しています。初期の年代記では、この場所は Val de la sauvage femme (フランス語で「野生の女性の谷」) と呼ばれています。」と書かれているが、「だからなに?」としか言いようがない。傑作!