「ALTERNATE REALITY」(NEW PORT LINE NPL−0014−11)
PAVEL WLOSOK TRIO & DONNY MCCASLIN
パヴェル・ウロソクと読むのだろうか。たぶん違うだろうな。とにかく知らないピアニストである(私はジャズのひとはたいがい知らないけど)。ヨーロッパ在住のひとかと思いきや、アメリカでふでに20年以上活動しているらしい。そのひとのトリオにダニー・マッキャスリンがゲストで入っている。内容は普通の4ビートジャズで、ダニーも普通に吹いている。しかし、70年代の香り漂う曲調でめちゃくちゃかっこいい。マッキャスリンは高音でテーマを吹くだけでもかっこいいなあ。ソロも普通だとは言ったが、随所に変態性がうかがえるのは、マイケル・ブレッカーがこういう4ビートセッションのときにあちこちで異常な「美味しい」ネタを振りまいていたのと似ている。ピアノもベースもドラムもかっこいいが、やはり耳はマッキャスリンに集中してしまう(もちろんマッキャスリンの活躍もリーダー他のしっかりしたサポートのたまものではあるが)。1曲目のソロの出だしや、5曲目のソロの前半部などはかなり変態的である。しかし、ほかはどちらかというと上がったら下がり下がったら上がるというジャズ的なマナーにのっとったソロが多い(それもめちゃくちゃ凄いのだが)。曲もリーダーのコンポジションが9曲中4曲(どれも佳曲)、マッキャスリンが1曲(この曲でのマッキャスリンの高音を駆使したソロはすばらしい)提供しており、ほかはハンコックの「スピーク・ライク・ア・チャイルド」やジョー・ヘンダーソンの「インナー・アージ」、エリントンの「プレリュード・トゥ・ア・キッス」など興味深い選曲である。録音も、低音がよく出ていて迫力がある。もちろんマッキャスリンの音楽性全開というわけにはいかないが、マッキャスリン好きにはマストでしょう。なお、マッキャスリン参加曲は、1曲目、3曲目、5曲目、8曲目、9曲目のみである。