piotr wojtasik

「WE WANT TO GIVE THANKS」(SOJAZZ RECORDS SOJ 003)
PIOTR WOJTASIK

とにかくシリアスで重い作品。ピョートル・ボイタシクと読むのだろうか。ポーランドのトランペット奏者のリーダー作。メンバーはとんでもなく豪華である。ニューヨーク録音なのでリーダーが単身ポーランドからニューヨークに行ったときの録音だろう。全曲ボイタシクのオリジナル(ええ曲ばっか!)で固めた意欲作だが、メンバーたちもその意気込みに応えて、ソロだけでなくアンサンブルもビシッと決めている。ネットを見るかぎりでは「ポーランドのハードバッパー」という紹介が多かったが、曲はハードバップというより70年代ジャズ的な硬派な雰囲気を持ったものばかりで(リーダーがそういう音楽性ということなのだろう)、そういう意味ではこの人選はぴったりである。全体に、ビリー・ハートのドラムがさすがのすばらしさで、音数を絞ってゆったりと構えているように見せながらも、かなり斬新な刺激を送り続けている。1曲目はビリー・ハーパーとの2管による曲だが、テーマのアンサンブルでのハーパーの音を聴くだけで、おお、かっこいい! と思う。ソロはそれぞれ短いのだが、聴き終えると充足感がある。2曲目は実質的には3曲目のプロローグ的な曲なので2曲目と3曲目で一曲という感じ。ジュディ・バディのボーカルが入っているが、これも雰囲気に溶け込んでいて、めちゃかっこいい(トランペットのオブリガードも渋い)。歌詞はビリー・ハーパーが書いたものらしい。どの曲もいいんだけど、なかでも5曲目のバラードがかっこよすぎる(ヴィンセント・ハーリングはアンサンブルでもソロでも最高の演奏をしている)。6〜8曲目はひとつの組曲で、アルトはゲイリー・バーツにチェンジする。バーツはカーブドソプラノを吹いているが、音色といいフレーズといい、ヘンテコでみずみずしいです。ハートのソロもヘンテコだがめちゃかっこいいし、ジョージ・ケイブルスもウディ・ショウバンドのころのように攻めているし、レジー・ワークマンもブリブリいわせてる。正直、リーダーのソロが一番普通なのだが、作曲(とアレンジ)と人選によって十分その責任を果たしていると思う。その結果生まれたこのすばらしいアルバムはボイタシクの音楽性のたまものであって、まさに「リーダーアルバム」といえる。独創的な連中を集めて、彼らをきっちり仕切ることでこういう音楽を生み出すことに成功したボイタシクはすごいです。どの曲もソロが短く、もう少しソロスペースが長ければもっと盛り上がったのでは……という気もするが、ソロで盛り上がるよりも全体の音楽性のこってり度合いで十分堪能できる。録音もいいと思う。聞き終えるとぐったりするような「この手の」ヘヴィ級のサウンドが2005年に録音されたことを喜びたい。傑作!