chris woods

「FROM HERE TO ETERNITY」(BLACK & BLUE BB930.2)
CHRIS WOODS

 クリス・ウッズをきみは覚えているか。カウント・ベイシー最後の来日公演のときにサードアルトで参加して、スローの「どブルース」の曲でフィーチュアされて、皆の度肝を抜いた。あのとき、颯爽としてカウントをドラムに指示する姿が今でも目に焼き付いている。あの来日公演のすぐあとに亡くなったのである。ジャズ批評別冊「アルトサックス」という本には、晩年、カウント・ベイシー楽団との来日が予定されていたが実現しなかった、とか書いてあるが、それじゃあ私が見たのは幻でしょうか。まあ、そんなことはいいとして、このアルバムはあのときの勇姿を彷彿とさせるすばらしい内容である。一曲目から快調で、ああ、クリス・ウッズってパップの人だったんだなと確信させる。音もぶっとくて、ひょろひょろしたアルトの音に嫌気がさしているひとにもおすすめだ。二曲目は、ベイシーオーケストラを従えて演奏した「あの」スローブルースを彷彿とさせるナンバーで、ウッズも吹きまくっていてすばらしい。3曲目は、このアルバムの白眉ともいえる「スモーク・ゲッツ……」で、途中から倍テンになってからが炎のアルトソロ。ピアノのジェリー・ウィギンズがちょっともたついているのが残念だが、それもご愛敬といってしまえるほどのウッズの快演である。4曲目はフルートに持ち替えての「インビテイション」で、これがまたいい感じ。続く曲や別テイクもなかなかよくて(少なくともクリス・ウッズに関しては文句のつけようがない)、充実のアルバム。録音といい、内容といい、いかにもジャズ喫茶向きの一枚だと思う。

「MODUS OPERANDI」(DELMARK RECORDS DE−437)
CHRIS WOODS

 クリス・ウッズのリーダーアルバムが何枚あるのかはしらないが、これはなかでもいまいちできの悪いほうではないかと思う。その理由は、一曲目のモードっぽいオリジナルのせいで、この曲の出来の印象がアルバム全体の印象になってしまうのだ。ウッズ自身はともかく、もうひとりのトランペットがまるで曲についていってなくて、ぼろぼろのソロ。ピアノはジム・マクニーリーで、さすがにちゃんとしているが、ウッズ自身もさほど曲をこなしている感じはなく、全体としてちぐはぐな演奏になっている。なんでこの曲、一曲目にもってきたかなあ……。続くビバップナンバーやスウィング的な曲では、トランペットのひとは別人かとみまがうような手慣れた、いきいきしたソロをするので、やはり音楽的な立脚点がちがうのだろう。この曲を、ウッズの意欲とみるか、時代の要請とみるか、まあ、意味はよくわからんが、とにかくほかの曲が一曲目だったら、このアルバムのイメージもかなり変わったかも(なにしろアルバムタイトルにもなっているし)。でも、私のクリス・ウッズに対する好感はこの程度では崩れることはない。このアルバムでも、随所でいいソロをしているし、バリトンに持ち替えての演奏もなかなかかっこいい。一曲目さえなかったら……と思わせるアルバム。ジャズ喫茶ならB面からかければ問題なかったところかも。