「CELEBRATING WILLIAM PARKER@65」(NOT TWO MW962−2)
BOBBY ZANKEL & THE WONDERFUL SOUND 6
アルトのボビー・ザンケルがかつて73年にセシル・テイラーのラージユニットで初顔合わせ(メジャーパフォーマンスとあるので、そうではない小さな共演はあったのかも)をし、それ以来共演を重ねてきたウィリアム・パーカーの65歳を祝うコンサートのセカンドセットを収録したアルバム。曲は3曲だけだが、まあ全体で一曲といっていいだろう。メンバーは超豪華で、ザンケルとパーカーはもちろんのこと、デイヴ・バレル(!)やスティーヴ・スウェルなどか参加したセクステットでの演奏だが、いやー、かっこええわ。基本的には本当に最低限のコンポジションとアレンジがあって、あとはひたすら即興……という感じの、いわゆる「古いタイプのフリージャズ」という、つまりは私がもっとも好むところの、アコースティックでガッツのある、血や汗の匂いのする、ごつい感じのリズムのある即興……という演奏である。そういうものに私は一番ジャズを感じる。主人公であるザンケルの熱いアルトのブロウは、少々音がヨレようが気にすることなく、そのときに感じた一番大事なことをひたむきにつむいでいく。これに感動しないものはいないだろう(と勝手に決めつける)。ヴァイオリンのダイアン・モンローもめっちゃかっこよくて主役級の存在感。スウェルのトロンボーンも弾けている。そして、もうひとりの主人公ウィリアム・パーカーはアルコの激烈なソロで圧倒する。豪放にして饒舌。いやー、たまりまへんなーっ。と大阪弁で叫びたくなるようなとてつもないエネルギーを感じる音楽だった。本当にすばらしい、かっこいい、舌なめずりをしたくなるような演奏ばかりが詰め込まれているのだが、この演奏が2017年のものだ、ということの意味がひとつだけあるとすれば、それは「ダレない」ということだろう。すべての瞬間に魂が込められている。具体的にいうと、手探りの場面がなく、ただただ確信に満ちたプレイが続くということだ。こういう古いタイプのフリージャズも、現在ではその方法論がしっかり共有され(手垢のついたものを忌避することも含めて)、音楽の一ジャンルとして完全に確立していることを示している。とかなんとか書いてしまったが、やっぱりデイヴ・バレルのめちゃくちゃぶりには驚くなあ。77歳? アホ過ぎるやろ! いやー、こんな77歳になりたいものです。アホが集まったアホなアルバム。最高!