「BROWN STREET」(INTITUTION INT3450 2)
JOE ZAWINUL
傑作。ジョー・ザビヌルが故郷ウィーンに開設した(と思われる)「ジョー・ザビヌルズ・バードランド」というライヴハウスでの、彼の曲ばかりを演奏する19人編成のビッグバンドのライヴ。ビッグバンドのメンバーは正直言って誰一人知らなかったし、二枚組ということもあって、発売されたときに買わなかったのだが、Aという知り合いに「めちゃめちゃええから絶対買わなあきません。『ナイト・パッセージ』なんか、ウェザーのやつよりいいですよ」と言われ、半信半疑で購入。さっそく聞いてみると、おお、たしかにいい。ザビヌルだけでなく、アレックス・アクーニャ、ビクター・ベイリーなどが入っていて、リズムセクションは超一流なのだ。問題はホーンだが、アンサンブルはすばらしい。けっこうむずかしいアレンジだが、テュッティも迫力あるし、小技もかっこいい。そして、ソロもなかなかのものなのだ。ショーターのかわり、というわけにはいかないが、ザビヌルの音楽をじゅうぶん表現しえている。「ザビヌルは、ウェザーで、ほんとうはこれがやりたかったのだ」というAの言葉は当たっているかもしれない。つまらんビッグバンドの多い中、これはかなりやられた。リズムセクションがいいせいかもしれないが、全体がいきいきしていて、十分なリハーサルのうえでミュージシャンが相互に理解しあったうえで演奏にのぞんだことの証拠である。どの曲もすごいが、1枚めの「ファースト・トラック」……トランペットもテナーサックスもめちゃめちゃかっこいい。きっと名のあるプレイヤーにちがいない。だが、この曲でいちばん凄いのは「バンド」それ自体。あまりにかっこいい。ようこんなむずかしい譜面をこのアップテンポでこなすなあ。信じられない。つづく「バディア〜ブギウギワルツ」のソプラノソロも壮絶である。3曲でフィーチュアされるカロリナ・ストラスマイヤーという女性アルトのソロもなかなかいい。2枚めも、「ナイトパッセージ」をはじめ、好曲が目白押しである。アンサンブルでは、シンセとのユニゾンなど、トロンボーンセクションが活躍しているのだが、なぜかトロンボーンソロが一曲もないのがちょっと残念ではある。全曲、ザビヌルがソロをする場面がかならずあるのだが、それがどれもめちゃかっこいい。衰えんなあ、このひとは。「シンセをぶんぶんいわす」感じ。豪腕。ひじょーーーーーにヘヴィな、ある意味ウェザーリポートの演奏と同等の重さのある演奏だが、ウェザーでの演奏に比べてある種の安心感があるのは、やはり「全部ちゃんと譜面になっているはず」ということだろうか。あちこちでいろんなことが同時に並行して起こっているので、何度聴いても、そのたびに新たな発見がある、というのはウェザーと同じである。それが、ザビヌルの音楽の特性なのかも。そして、それはマイルスからきているのかも……というようなことを聴きながら思いました。