「ESTA PLENA」(MARSALIS MUSIC 0874946001205)
MIGUEL ZENON
まったく知らないひとだったし、アルトなので、かなり長期間考えたあげく購入してみたら、いやーん、めちゃめちゃええやーん。こういうとき、「俺の嗅覚ってすごい」「知らないミュージシャンのアルバムを買うなんて俺って大胆」……みたいな快感でのたうちまわる(←アホ)。一曲目からかなり本格的なラテンリズムに乗って、モーダルで過激な曲調の演奏が炸裂する。このひと、アルトの音は非常に普通によくて(変な表現だが)好感が持てるうえ、フレーズはブレッカーをアルトに移しかえたようなところもあり、しかも半端じゃないラテンな感じが異常な快感を生む。ドラム、パーカッションはもちろん、ピアノのひともすごい。全員一体となったど真ん中ストレート!というようなグルーヴはめちゃめちゃ強力。また、ボーカルが入る曲はサルサっぽくて(知識がなくてすいません)、これまた雰囲気よし。こういうの、どういうんでしょうか、モーダルなラテンジャズというのか。とにかく疾走感と躍動感に満ちあふれ、しかも(各自のソロを満喫するという)ジャズ的な楽しみかたもできる、というおいしすぎる内容。すみずみにまで配慮が行き届き、このうえない至福の状態を提供してくれます。それにしても、私はサルサはいう音楽は何度聴いてもそのよさがいまいちピンとこないのだが(学生のころ、すごく流行ったことがあって、いろいろ聴いたのだが、これはいいよ、とすすめてもらうアルバムを延々としつこくくり返し聴いても、結局よくわからぬままだった。こういう縛りつけるような聞き方をしてもわからん音楽は、ようするに自分には縁がないのだと思う。たいていの音楽は、何十回も聴き続けると、なんとなくわかってくるものなのだが……。ただ、エディ・パルミエリは別)、こういう提示のされかただと、なぜか素直に感動して、ハマってしまうのはよくわからん。結局、ジャズしかわからんということか。