michael zerang

「SONGS FROM THE BIG BOOK OF LOVE」(PINK PALACE PPCD001)
MICHAEL ZERANG & THE BLUE LIGHTS

 マイケル・ツェラングももう56歳。シカゴの重鎮といっていい年齢ではないか。そのツェラングのリーダーバンドであるブルーライツのアルバムがCDとカセットテープで発売され、しかもフロントは3管で、マーズ・ウィリアムスとデイヴ・レンピス(あとのひとりはコルネットのジュシュア・バーマン)が入ってるって……これは聴くしかない(そのうえベースはケント・ケスラーだ)。そして、CDとテープは内容がちがうので、両方買うしかない……。聴いてみてびっくり。ツェラングといえば、かなりフリーインプロヴァイズド的な演奏も多いので、もっとフリーっぽい演奏なのかと思っていたらとんでもございません。ばっちりアンサンブルのあるビートものばかりで、もはや「ジャズ」と言っていい演奏だった。曲もめちゃかっこいいし(全曲ツェラングの作曲らしいです。ドラマーがここまで曲を作れるというのはすばらしいことだ)、もちろんそれぞれのソロは爆発しまくりで、煽り立てるドラムとベースも凄まじい。いやー、まったく思ってもいなかった内容。しかも、ライヴ。これはもう皆さん、聞くしかないですよ。めちゃくちゃかっこいい。ツェラングって、こんなに普通に叩くひとだったのか。全体に、ガトスミーティングを連想するような、曲とアレンジとソロの完璧な融合で、これは俺のいちばん好きなやつやん! 買ってよかった! と聞きながら何度も叫びました(嘘です)。これだけ枠組みがガッチリしているとソロイストを束縛してしまい、面白くないんじゃないかという意見もあるかもしれないが、さすがにこれだけの凄腕を集めるとそんなことは微塵もなく、皆水を得た魚のようにいきいきとはじけまくっている。まあ、私としてはマーズ・ウィリアムスが目当てなわけだが、フロントでいちばん活躍しているのはデイブ・レンピスで、アルトにテナーにバリサクにと八面六臂の大活躍(とくにアルトはすげーっ)。レンピスはとにかくすばらしくて、素人意見を言わせていただくと、このひとはギャーッというスクリームが魅力的にできるようになったことが大きいのでは? しかも、バップ的なソロでもモーダルなソロでもフリーなソロでも、どれもパッションを叩き込み、正攻法に激しくブロウして聴いているものを感動に導くことができる。アルバム全体の印象はハードバップというかジャズロックというか……なんかそんな感じでもあるのだが、そこに注ぎ込まれている圧倒的なエネルギーと狂気は、ああこれも自由な音楽なのだなあと無条件に納得させられてしまうだけの説得力となる(狂気が説得力というのもよくわからんかもしれんが)。個々の曲には触れないが、バラエティ豊かで聴けば聴くほど楽しくかっこいい演奏ばかり。フリージャズのファンとかジャズ好きとかいうより、すべての音楽ファンに聴いてほしいです。傑作。

「HASH EATERS & PLACEKEEPERS」(PINK PALACE PPCS001)
MICHAEL ZERANG & THE BLUE LIGHTS

 なんとカセットテープ。上記CDと同じときの録音。感想としては上記CDと一緒、つまり傑作(曲のダブりはまったくないので両方聞かないとね)。こちらでも、とにかくレンピスが爆発していてめちゃくちゃすごい。以前はまるで感じなかった狂気すら感じる。とにかく殻を破ろうというか構成が破綻しかかっていてもいいというか、いや、わざとそうしている感もあって、当分レンピスからは目が離せないのだ。正直、内容がすごくいいので、CD二枚組にしてほしかったな。