「ANCESTRY」(ATELIER SAWANO AS042)
KIYOSHI KITAGAWA
傑作です。北川潔といえば、すでに全編ベースソロだけのアルバム「ソロ」を発表してファンの度肝を抜いたが、今回はピアノトリオ。一曲目から、なかなかテンションの高い緊密な演奏。あっというまにその世界に引き込まれる。10曲中、4曲が北川のオリジナル。あと、2曲がショーター、2曲がタッド・ダメロンの曲、残る一曲がスタンダード……という意欲的な構成。ダメロンの曲はどちらもベースが大々的にフィーチュアされているし、残りの曲もかなりまえに出ており、じつにかっちょええ。ケニー・バロンも、自分がリーダーのトリオのときよりも演奏スタイルがえぐくなっているような気さえする。あと、なんといってもブライアン・ブレイド。すばらしいドラム。こういったピアノトリオでも、実にアグレッシブにプッシュしてくれて、聞いていて心地よい瞬間を多く演出してくれる。録音もよくて、3者のコラボレイションがばっちり聴きとれる。10曲はあっというまに過ぎて、また最初から聴きたくなるような快調な演奏ばかり。ああ、北川潔はとうとうここまで来たか。この手の音楽にはあまりくわしくないが、このトリオが、おそらく現在の世界のモダンジャズシーンにおいて、最高峰(のひとつ)であることは疑いないぞ。生で聴きたい。そして、どんな管楽器奏者も受け入れるだろうな、このトリオは。唯一欠点があるとしたら、日本語ライナーです。この部分、ちょっと過激なので別項にします。